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「約束」石田衣良

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「約束」 石田衣良
石田衣良の短編集(リンク先は単行本
ですが、角川文庫で出た)といえば
都会の若い人たちがおしゃれなやりとりを
する、一昔前のトレンディドラマ(懐!)風味の
ものをいくつか読んだことがありますが、これは
人の心が理不尽な外的要因について傷ついて
それが誰かとの「約束」で再生していく、
そういうお話ばかりを集めた短編集です。
作者が、池田小学校の殺傷事件をきっかけに
時には涙を流しながら描いた、というだけあって
読んでいて「こんなことがあったら心が壊れそうに
なるよ」と、それぞれ「友達が通り魔に目の前で
襲われた」「家族が突然大病をした」などなど、ありえるけど
さほど頻繁に起こることはないし、あってほしくない設定なのに、
感情面でのリアリティがあって、一気に読みました。
運動も勉強も出来た親友を通り魔に刺されて
「僕が死ねばよかったのに」という小学生の男の子の言葉も
それを聞いた両親が「悪いと思うけど、私たちはあなたが
生き残って良かったと思ってる」と言う、言ってはいけないけど
正直な答えも、実際にその場で聞いているような臨場感があった。

傷ついた人がすっきり立ち直る話って、ドラマや俗っぽい小説だと
大体「それ、立ち直ってないけど妥協してそういうことにしただけだよね?」
(例えば「セカチュー」でいとしい少女が死んで10何年も引きずっていた
主人公が、映画やドラマだと、中途半端な恋愛をして「これでよかったんだ」と
なんかムリにまとめてるようだったり)みたいな、読んでいてウソっぽさを
感じるのが多かったのですが、この短編集は「絶望から1歩浮上する」という
その浮上する瞬間をさらっととらえたみたいで「あ、なんとかなりそう?
糸口、見えた?」と主人公たちが歩き出したことにほっとする。そんな感じです。

と書いていたら、テレビのニュースで、2年前に関西で起こった脱線事故で
その電車に乗っていた女の子のインタビューをやっていた。
「区切りをつけなくてはいけないと思う」という言葉が、重く響いた。
割り切る、とか、忘れる、じゃなくて、区切ること。それだけが、これからも続く
明日へ自分の背中を押す力になるのかもしれない、たしかに。
by tohko_h | 2007-07-01 23:03 | reading