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「不器用な赤」ヒキタクニオ

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「不器用な赤」
ヒキタクニオ
映画化もしたヒキタ氏の
代表作、といえば、
「凶器の桜」だが、
なんとなくバイオレンスな
感じがして読んでいない。
でも、その代わり、といっては
何だけど「働くヒロインの
成長と挫折とナンチャラ」
みたいなヒキタ作品は
どれもお気に入りで、
新刊をチェックしてきた。
「角」では出版社の校閲係、「ベリィ・タルト」では新人アイドル、
「青島」では広告代理店、それぞれの職場での女の子たちの
描かれ方が気持ちよい。皆、背筋が伸びて、たまにぽきんと折れそうに
なって、でもくじけないし腐らない。まっすぐでいい目(見たことないけど
絶対そうだってわかる描かれ方)をした彼女たちが好きだ。

今回の新作「不器用な赤」のヒロインの目も、まっすぐだ。
そして、憎しみというフィルターを通して世界中を見つめている。
利沙は高校2年生で、母と二人暮し。離婚した父からの経済的な
援助は潤沢で(1年につき、一部上場企業の課長の年収クラスの
振込みがある、とのこと)金銭的には余裕のある母子家庭で暮らしている。
デパ地下でできあいの惣菜を買い、安っぽいジムのインストラクターに
夢中で娘をほったらかしの母を、冷めた目で見つめながら…
資本主義に基くばかばかしい今の世界を、憎む利沙は、ブランド物を持つ
アホ面のカップルを襲ったり、つまらない商業看板に赤いペンキを
ぶちまけてダメにしたり、という自分なりの「革命」をしている。
その活動に理解を示して「化学が好きだから爆弾作りにも興味あるから」と
技術者として参加を申し出てきたのは、クラスメートの伊原知恵(ちえ)。
彼女は在日韓国人で「日本人からいくらでもお金をむしりとってやる」と
言い切る守銭奴の父と兄に嫌気がさしていた・・・
そう、2人の少女は、モノとお金が溢れる資本主義都市・東京の中心で
それらをぶち壊すことを夢見て、行動開始!

みたいなお話。おそらく、ブランドバッグや伊勢丹を愛する私は
この2人と出会ったら、速攻ターゲットにされること間違いなし(笑)。
確かにお金持ちだけど、利沙の母もおろかだし、知恵の父や兄も
考え方が歪んでしまっていて、身内だろうとむかつくのは判る。
しかし、東京全体に彼女たちが抱くとてつもない憎しみは、ただの
悪意に思えて、ほとんどふたりに共感できなかった。
ふたりの暴走を見守り、苦笑いし、そして必死で止めようとする
質屋のおじさんのキャラが強烈。学生運動が盛んな時代に
返還直前の沖縄で彼が経験したことを語る短い挿話が印象的。

というわけで、まっすぐ前を向いている少女たちの話ではあるんだけど
かなりアナーキーというか、かっとんだ印象でした。
by tohko_h | 2007-08-28 13:41 | reading