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「誰か――Somebody」 宮部みゆき

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「誰か」宮部みゆき
(文春文庫版)

自転車にはねられ、梶田と
いう男が死んだ。犯人は
逃げ去る。死んだ梶田は、
大財閥・今多コンツェルンの
会長の運転手だった。
梶田運転手の妻は既に他界
していたが、32歳と22歳の
娘たちが遺されてしまう。
結婚を目前にひかえた
控えめな長女・聡美と、
明るく奔放な次女・梨子。
姉妹は、大切な父の人生を、本として出版したいと言い出した。
それを知った今多会長は、姉妹が本を出すための相談相手として、
娘婿の杉村(35歳・この物語の主人公)を選ぶ。
杉村は、もともと小さな出版社で児童書の編集をしていたが、
今多会長の娘と結婚したことをきっかけに、コンツェルン内の
広報雑誌を作る部署に勤めるようになっていた。
そんな杉村が姉妹に会って話を聞くと、妹は早く本を出して
父をはねた犯人を見つけたいと意気込んでいるが、姉のほうは
ある理由からためらっている。姉妹の2人の温度差が気になる
杉村は・・・

宮部みゆきの書き下ろしミステリーが文庫化、ということで
書店にずらーっと並んでおりました。最近、横山秀夫とか、
東野圭吾とか、サクサク系の文体のミステリーを読むことが
多かったので、一人一人の脇役までディテールを丁寧に
描きこむ宮部さんの書き方になじむまでは、かなり読んでいて
時間がかかるしエンジンがかからない感じでした。しかし
舅の偉大さに気後れもしつつ「負けないぞ!」と張り合う気持ちも
ある杉村、とか、明るいお嬢様がそのまま人妻になったような
その奥さん、とか、探偵役のキャラクターがだんだん立ってくると
ミステリーとしていい感じになってきます。うるさいほどの細かい描写が
効いてくるわけです。じわーっと。しかし、ストーリー自体は
梶田のひき逃げ事故のこと、梶田の過去のこと、性格の違う
姉妹のすれ違い、など、盛りだくさんな割りには薄味かな。
どちらかというと、謎がとけてすっきり系、ではなくて、
色々やりきれないことがあったけれど人生は続く、という感じの
ほろにが系エンディングです。
ラスト近くで、実際に罪を犯した犯人より、人としてコイツのほうが
悪いだろう!という人が出てきて、吉田修一の「悪人」を読んだとき
みたいに「本当の悪(あく)って・・・」と考え込んでしまいました。

定価¥680 (税込)→自分的プライス¥680(税込)
長さ的にも内容的にも読み応えはそれなりにあるので値段相応と見ました。

さんぽん~類書を散歩してみよう!
「名もなき毒」 宮部みゆき
連続無差別毒殺事件を扱った長編。杉村がまた語り手として
登場するようです。来週は新幹線で旅に出るので(出張)、
買っておこうかな。
by tohko_h | 2007-12-08 23:56 | reading