人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「イジ女(め)」春口裕子

「イジ女(め)」春口裕子_a0079948_0412545.jpg
「イジ女」 春口裕子
女性同士のドロドロ、ズブズブな
負の関係がねじれてく様子を
ねちっこいタッチで描いた短編集。
高級住宅街、会社のOL同士、
披露宴の新婦友人席の輪など、
お互いにいじめられたくなくて
必死で立ち回る女性たちの
様子が滑稽で哀しい。怖い話を
怖く描いているんだけど、
毒がないので物足りない。
作者、イジワルな話を書くのは上手だけど、
ご本人はあんまりイジワルじゃないのかも。


作品中の友達同士のネチっこい会話描写を読んで
「もっとリアルではえげつないこと言ったりやったりしてる人も
いたような」と、すこし物足りなさ(?)を覚える女性も
少なくないはず。お金持ちと結婚することになった
美人で我が侭な同僚の披露宴の話(新婦にバカに
されていた地味な女の子とかぶつかっていた気の強い子とか
下僕みたいに卑屈に振り回されてる子とか)は、
早く解散したほうがいい女性同士のグループの典型って感じ。
そのぶっ壊れるシーンですこしすっきり。ホラー風味の
派遣女子社員同士の確執を描いた「イジ女(め)」の
いじめシーンは、ちょっと女子高生同士っぽくて(女子トイレで
やや性的ニュアンスを含んだ暴力行為、みたいな)
「これは実際会社でのいじめではありえないんじゃ?」と
思いました。あと、どの話も、基本、そのグループの中で
中立、とか、普通、みたいな立場の女子が語り手なので、
どんなにえぐい内容を描いている場面でもなんかあっさりしてる。
いじめられている当人の恐怖に歪んだ叫びのような、とか、
いじめている側の陰険な微笑みまじりの心理描写、とか、
当事者の物語として描かれたほうが面白かったかも?

定価1680円→自分的プライス420円(25%)
文庫化したときにすさんだ気持ちだったらまたウッカリ読んで
しまうかも。女性の集団の怖さを描いた作品だと、やはり
桐野夏生の「グロテスク」あたりがベタだけどイチオシかなー。
林真理子も基本が善人なので、愚かな女の失敗譚は書いても
計算高い女が緻密にいじめをする話ってあんまりあわない
気がするし…
by tohko_h | 2008-02-13 00:41 | reading