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「さまよう刃」東野圭吾

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「さまよう刃」(角川文庫版)
東野圭吾
愛娘を弄ばれ、殺害された父親。
ある密告者により真犯人を知り
警察より先に犯人を見つけて、
自らの手で復讐をすると誓い、
かつては趣味として楽しんでいた
猟銃を手に、帰ってくる事の無い
旅に出た。犯人は少年。もしも
警察が先に見つけてしまったら、
少年法によって仮出所まで
3年程度で済んでしまうに違い
ないから・・・


法律を自らもおかしてでも、復讐を遂げようとする父親。
自分勝手で、大人の理解の範疇を超えるおろかな若者たち。
父親の気持ちを分かりながらもやりきれない思いのまま
追いかける刑事たち。
そして、そんな彼らをセンセーショナルにあおるマスコミ。
おそらく作者は、少年法の今の内容で、このごろのありえない
モンスターのような若者を扱うべきなのかとか、犯罪被害者側の
家族はその心の中の嵐でどれだけ苦しむか、とか、シリアスな
テーマを描きたかったのだと思うが、ミステリー作家としての
サービス精神があちこちに見え隠れして、エンタテイメントとして
立ちすぎている、というか、テーマの重さに対して描き方が
ざっくりしすぎているような気がした。最後の対決シーンの緊張感
あたりはさすがです(主人公がぎりぎりまで警察に捕まらないのは
なんかうまくいきすぎの気もしたけれど)。
by tohko_h | 2008-08-02 23:15 | reading