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「エイジハラスメント」内館牧子

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「エイジハラスメント」内館 牧子
34歳の主婦・蜜(みつ)。
学生時代の大恋愛の相手の
夫と、可愛い娘に恵まれて
幸せに暮らしている。しかし
パート先のお店で「オバサン」と
言われたことがきっかけに
「若い人には叶わない」と
迷走し始めてしまい・・・


ドラマでも著作でも、内館作品を読むときって「いやなもの見たさ」みたいな
気持ちが自分の中には、かなりある。どろどろの設定、本音満載のセリフ
(実生活だとここまでぶっちゃけることは無理ちゃう?ってレベルまで)、と、
読んでいても「楽しい」というより「怖い~」と思っちゃったりして、ある意味
女性のホラーかななんて気もする。お化けよりも現役で生きている女性の方が
よほど怖い、というのはうちの旦那氏の口癖だが(だれだ彼をそんなに
女性恐怖症にした女性は・・・って、わ、わ、私!?)、それも一理あるかも。
少なくとも内館ワールドの女性のおっかなさは相当なものである。
そういう意味では「怖いもの見たさ」、そして、そういうえげつないものを
見たがってしまう自分の下世話さを再確認させられつつ、読むって感じ。

今回もカバーデザインからして、えぐい。
若くない女性が経年劣化している姿と、若い女性のすらりとした姿を
並べたカバーは、内館さんこだわりの絵柄だそうです。ここで
「若くてもそーでもない子もいるし、最近の30代40代ってきれいな人も
結構いるしー」なんてためらわないで、この絵にしちゃうところがやはり
なかなかすごいと思った。この小説の中で、年齢を重ねて
おばさんあつかいをされて傷つくことを「エイジハラスメント」と名付けた
ことといい、すごく戦略的な作家さんだなーと思う。あざといけど賢い。
そして改めて「意地の悪い女性の書くものはおもしろい」と思って
しまった。内館さんの場合は単なる意地悪目線じゃなくて、さんざん
登場人物たちを痛めつけたあとに「まあ、ちゃんと生きていけるから」と
ラストに背中を押してあげたり救いを用意したりしてるので、その辺も
安心して読める。基本、性善説の人なんだろうな、意地悪でも。
(だから、横綱問題なんかも、軽蔑して切って棄てられずに
うだうだと言いすぎなくらい意見しちゃうのかもと思う。相撲愛が
暴走してしまって)。

今回のテーマは、「女性と年齢と衰え」である。
34歳のヒロインは、バイト先の若いギャルっぽい女の子や夫の妹の
肌や髪のつやつや感、贅肉のないからだ、そして怖いもの知らずな
感じが気になって仕方がない。大人の女性には若い女性にはない
内面的な豊かさが備わってくる、ということを頭では理解しようと
しても「でも、目の前のこの本物の若さには叶わない」と思って、
アンチエイジングとぶりっこを続ける義姉に感心し、60歳の母が
美容に関心を持たないことをいとわしく思ってしまう。そんな妻の
若さへの必死さを夫は「かわいくて女っぽい」と思ってる部分も
あるんだけど、だんだん「私っておばさんかな」とぐちぐちしている
執着っぷりが少し疎ましくなってしまう・・・

それって、だんだん読み進めてくると見えてくるんだけど(ヒロイン
本人にはなかなか見えない)、ヒロインの、自分自身に対する
満足度が低く、それを「若くないから」と、もう手に入らないもののせいに
して拗ねてるんじゃないの、という気がした。だってこのヒロイン、
夫と子どもと家と安定した生活、という素敵なもの(ある視点で見れば
フル装備じゃん、ってくらい)を得ているのに、失われた美肌だの
かわいらしさなどのほうばかり見てしまっている。
気持はわからなくもないんだけど(取り戻せないからこそ執着する
という心理は誰しもあるから)、やはり、今の自分に対する不満が
過去の自分よかったなー若いのっていいなーっていう不満に
彼女の場合はなってしまったというか。

そんなヒロインの「ないものねだり」以上に作者が描こうとしたのは、
現代社会に於いての「無意識の年齢による女性の差別」だったようだ。
ヒロインの夫の親友は、25歳以下の女じゃないとできない、と
断言し、パート先の男たちは「オバサンうるさいぞ」と暴言を吐き、
という風に「若くなくなった女性を平然と傷つける世の中」に対して
どうなのよ、という問題提起的なことをしたかったのだろう。
その具体例として、倖田さんの羊水発言なんかも本文中に出て
来たんだけど「わざと意地悪としてじゃなくて、ああいう風に無神経な
形で傷つけられるのが一番こたえる」みたいな書かれ方には少しだけ
納得。

ただ、いじめとちがって差別されるってことには理由があったりする。
年をとったり、あと、仕事によっては、一生懸命働いているうちに
もって生まれた性は女性なんだけど、だんだん自分の男性っぽい
部分が育っちゃうというか、そういう意味で女じゃなくなっていくっていう
のは人によってはあると思う。私なんかも職場では相当なオッサンだ、
おそらく(笑)。もちろん女性らしさを失わずに仕事をしたり年を重ねられる
賢い女性もたくさんいるけれど、自分の場合、どこかオヤジ化を
ヤバいことに楽しんでいるきらいもあるかも、最近(笑)。

なので、せめてダイエットとか肌のお手入れはがんばろうと思うのでした。
ほら、外見までオヤジ化したいわけじゃないので(笑)。
というわけで、私の場合は、若さ以前に、女性っぽさに執着しなくちゃ、
というレベルかもしれません(笑)。

でも、20代の女の子の美肌やミニスカート姿を見て「若いって
いいなあ」としょんぼりしちゃうオバサンより「かわいいなー」と
ニヤけちゃうオッサン女子のほうが精神的には健やかな気がします。
別に、女を降りてますってわけじゃないんだけど・・・(笑)。

ついでに今ハタチに戻してやるって言われたら私は絶対にパス
(田中君か斎藤くんと付き合えるなら話は別だが(笑))。
あ、後々ダイエットに苦労しないように体型管理だけはやるけど、
就職活動と仕事覚えるのと恋愛と結婚とマンションのローン組むのと
全部やり直すなんて絶対にめんどくさい(笑)。

そうそう、この話の本文中に、内館さんが佐伯チヅさんの言葉を
引用して「女性は(肌や外見の美しさでいったら)15歳がピークで
あとは衰えていく。それを遅らせたりせきとめたりはできるけど」みたいな
ことを書いています。

また、かつて、作家の林真理子は「女の子は14歳くらいのときに
どの位置(モテ子とか地味子とかそういう女子勢力分布図に
おける位置ね)にいたかでその後の人生が決まる」と書いていた。

しかし、結構、外見でも、女子的立ち位置でも、逆転ってあるよね
リアルだと。クラスのマドンナの没落的な話とか、地味子ちゃんが
化粧がうまくなってて都会的美人(風)になってたりとかいくらでも。
どっちかというとパッとしない若い時代を送っていた自分としては
ぜひそっちのラインを狙いたいもの。なので、学生時代からの
友達と久しぶりに会って「変わらないね」といわれるとガクッとくる。
この「変った私を見てね」という欲望がダイエットやコスメ欲に
程よく作用してくれればいいかな、とは思ってるのね正直。

というわけで私は、70歳くらいでモテモテになる予定(笑)。
by tohko_h | 2008-08-06 12:51 | reading