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「せせらぎの迷宮」 青井夏海

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「せせらぎの迷宮」
青井夏海
30歳を少し過ぎた史(ふみ)は
大学図書館で働き、実家で暮らし
かわりばえのない日々を送っている。
ある日、小学校の同級生だった
(もと)男子と会い、頼まれごとをする。
小学校5年のときに担任して
もらっていた先生が定年を迎えるに
あたって、担任したクラスでそれぞれ
作っていた文集を年度ごとに集め、
全部そろえて先生に贈ろう(先生もちゃんととっておいてないらしい)、
という企画のために、自分たちの代の文集を探すというものだった。


自分の部屋にもなく、同窓生たちに電話をかけても名簿は見つからない。
連絡を取るうちに、小学校5年のころに自分がどう過ごしていたかを
思い出して、史は複雑な思いにとらわれる・・・

というわけで、現在(2008年)と、小学校5年だったころが交錯して
話が進んでいきます。ということは、主人公たちは私ともほぼ同年代。
当時、学校ではいじめが社会問題になるレベルで頻発しており、
特に、高学年女子のそれは、暴力にうったえたりしないぶんだけ
人目につきにくく、陰湿でしつこくて本当に容赦ないとか一部で
言われていました。

そんな、時代の、小学校5年女子。
グループ、交換日記、お泊り会、体育でストレッチするときに組む相手、
先生の贔屓、受験する子としない子・・・などなど、当時の教室で
私自身も「居心地が悪いな」とか「息苦しい・・・」と思っていたあれこれが
きっちりと小説の中にも描かれています。
大人になると、人を嫌ったり悪く思ったりすることに多少の罪悪感を
伴うことが増えるから、悪感情が生まれても、なんとかなだめようとか
数ステップを経て鎮めてみようとしたりやりすごそうとしたり、みたいな
葛藤めいたものがあると思うんだけど、そのへんは、まだ子供だから
「あの子を私が嫌って何が悪いの?」みたいなむき出しの悪意や
憎しみを生のまんまで表現したりぶつけたりする・・・その危うさ、未熟さなど
ミステリー仕立ての細かい仕掛けもおりまぜつつ、じっくり読みました。

教室での女の子のカーストめいたものを描いた小説といえば、
桐野夏生の「グロテスク」ははずせませんが、これも、小学生モノだけど
同じにおいのする「狭いところに閉じ込められている女の子の集団って
なんだかなあ」っていう話として、かなりよく描かれていました。

野球をテーマにしたコミカルな作品で知った
作家さんですが、これはこれで、さわやかじゃない話なんだけど、
丁寧に大切に書かれた話だな、と思いました。
by tohko_h | 2009-01-15 00:36 | reading