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「雨にも負けず粗茶一服」松村栄子 「福家堂本舗」遊知やよみ

「雨にも負けず粗茶一服」(上)(下)
「雨にも負けず粗茶一服」松村栄子 「福家堂本舗」遊知やよみ_a0079948_1585076.jpg「雨にも負けず粗茶一服」松村栄子 「福家堂本舗」遊知やよみ_a0079948_159269.jpg


東京の弱小武家茶道「坂東巴流」の跡取り息子である遊馬は、武道にも茶道にも
興味が持てず、ロックだ!と、大学入試をサボってライブに行きクルマの免許を取り、
髪を青く染める。それにぶち切れた父親に「京都の寺で修行をして来るんだ!」と
命令され、あわてて友人宅へ家出。しかし、家出までしていきたくなかった京都に
友人の友人のつてをたどっていかなくてはいけなくなる。結局、老舗の畳屋の
居候となる遊馬。しかも居候先は、自分の実家の流派の本筋のような宗家巴流の
お茶の師匠であるおばあさんの家だった!? しかもそこは、和菓子作りマニアの坊さんや
ロン毛で公家スタイル風の高校教師、などなど、クセのある茶人がぞろぞろと出入りする
濃茶よりこってこての茶道な世界だったのだ!

高校を出て間もない未熟な主人公が、独特の作法とお茶への愛に生きる個性的な人たちに
振り回されるうちに、自分とお茶ってなんだろう、自分の人生っていったい、と、だらだらと
暮らしているようでいつのまにか考えさせられてしまう過程がコミカルにテンポよく
描かれている。やたらと濃いキャラが出てきてそれぞれ変なんだけど結構まじめって
コメディだから、映画にするなら間違いなくクドカン脚本&監督にすべきです(ファンでも
ないのに力説してみるワタクシ)。

京のぶぶ漬けをたとえに出すまでもなく、京都の文化って、長い歴史と独特の京都人気質に
より、よそ者から見ると不思議だったり理不尽だったりちょっと面倒なところもあるような
イメージ。主人公の遊馬だって、東京で、実家は特殊だったものの普通の学生生活を
送ってきたわけで、初めての京都暮らしってことで最初はかなり戸惑っていたし、京都弁を
話す人たちに囲まれただけで身構えていた。というわけで、よそ者から見た京都、的な
読み方も面白いかも。カルチャーギャップというのも裏テーマなんじゃないかな。

さて、そんな京都で生まれて育った三姉妹を主人公にしたのがこちらの漫画、
「福家堂本舗」〈現在1~4巻まで文庫で発売中。あと3冊くらいかな)。
昔「ぶ~け」で連載されていたときに凄くハマって読んでいたけど、今回久々に読み直すと
やっぱり面白い。福家堂という老舗の和菓子屋の三姉妹(しっかりもので頑固な長女、
おてんばだけど変にまじめな次女、そして内気で少し年の離れた三女)の恋と青春、
そして母親との関係(父はすでに亡くなっており、姉妹の母親がしっかりと老舗を
守っている。当然、婿を取り店を存続させるためにしつけは厳しくしている)などを
丁寧に描いた佳作。こちらは京都人目線で徹底して描かれているのが面白い。
絵も凄く綺麗でシンプル。無駄のない線が美しくてお勧め。
ついでに、この作者・遊知やよみさんの最新作「これは恋です」も(現在連載中)、
先生→生徒、への不器用な恋愛を描いたちょっと今までの「教師モノ」とは違う
面白さで、追っかけてます。
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by tohko_h | 2009-02-21 23:58 | reading