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「津軽百年食堂」森沢 明夫

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「津軽百年食堂」森沢 明夫
青森県は、観光振興の一貫として、戦前から続く大衆食堂が県内に
多く残っていることに注目し、3世代、70年以上続く大衆食堂を
「百年食堂」と認定した。本作は、著者が、10軒の“百年食堂”に取材し、
そこで得たさまざまなエピソードや取材相手の人柄からインスパイアされた
すべてを詰め込んで創作した、しみじみと優しい物語である。


舞台となる弘前にある、津軽蕎麦をメインとした1軒の食堂。
百年前に、初代にあたる青年が、屋外で蕎麦を売っていたころから物語は始まる・・・
生まれつき足の悪い賢治は、母親に「他の人よりゆっくり歩くから見つかるものも
ある」といわれ、純真にまっすぐに育った。津軽蕎麦と地酒を売るささやかな商売を
ひたむきにする彼の姿は、多くの客たちに支持され、愛される。そして、だしをとるための
魚を毎週売りに来る清楚な少女・トヨも、賢治のそんな人柄を知り、ふたりは淡い恋心
めいたものを抱きあうようになるが・・・この賢治のストーリーと交錯するのが、賢治から
数えるとひ孫にあたる陽一の物語。彼は、東京でフリーターとして暮らしているが、
都会のリズムになじめず、でも弘前に帰る気にもならず、灰色の日々が続いている。
しかし、仕事場で偶然に、弘前で同じ高校に通っていたカメラマンの卵・七海と出会い、
お互いのそんなもやっとした気持ちを分かち合うことができるようになる。孤独ではなくなった
陽一だが、ある夜、弘前から電話がかかってきて・・・。

個人的に、現代を生きる陽一と七海の話は、奥手でまじめなカップルの地味な恋愛って
感じで好感が持てるところもあったけれど、都会でなじめずにいじけている若者に対しては
「嫌なら帰ればいいのに」と思っちゃうところがあるので、ちょっと共感しずらい部分があって、
帰るふるさとや継ぐ仕事があるからこそ、東京で何にも考えず数年だらけていられるんじゃ
ないの?と、恵まれた境遇に気づいていないようにも思える彼らに軽くイライラした。
陽一の友人で弘前に残ってしっかりと人生を切り開いている仲間たちのほうがすがすがしく
素敵に思えた。

どちらかというと、賢治とトヨの話だけで1冊読みたかったくらい。賢治の悪いほうの
足を見て「あ、ひかれるかな・・・」と彼が思った瞬間に「働きものの足だね」とニッコリする
トヨの清純っぷりには萌えるしかないでしょう(笑)。賢治に店を持つようにすすめる
馬の売買をするちょっとこわもての商人とか、津軽塗りの職人で、仕事は丁寧だけど
ほら吹きの男とか、脇キャラもきっちり立っていて。

しかし、東北出身の人は、東北=奥手、まじめ、清楚、我慢強い、みたいな既成イメージが
たまに嫌になることないんだろうか。たいていの作品で、そう描かれてる気がするんだけど。
by tohko_h | 2009-03-13 23:36 | reading