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角田光代「くまちゃん」

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「くまちゃん」角田光代
1章ごとにかわる主役。
大学卒業直後の不安な春に「くまちゃん」と
いう男と知り合った苑子の話を皮切りに、
次々と、フォークダンスの相手が
変わっていくように、恋が終わり、
また始まり、そしてまた、仕事を得て、
仕事を失い・・・という、恋愛と仕事を軸に、
生きていくことをビビッドに描いた作品。

なんか、ざっくりしたまとめですが・・・
版元のサイトの書評が完璧なので
こちらを参照してください。
山崎まどか氏の書評


報われない恋の連鎖、という基本的な話の運びは、羽海野チカの大ヒット漫画
「ハチミツとクローバー」の「みんな片思い」という前半のストーリー展開を
少し連想した。あと、クドカンのドラマ「マンハッタン・ラブストーリー」も、なんか
恋の矢印が一方通行ばっかりで、それがある日リバース、みたいなトンデモ展開で
見ていてびっくりした記憶が・・・
まあ、若いうちは特に、ひとつの失恋は次の恋愛のスタートと重なる。
苑子がくまちゃんに振られれば、そのくまちゃんは次の誰かと出会い、新しい恋を
するし、苑子だって、仕事をしたり、暮らしているうちに、くまちゃんを失った苦しみは
薄れ、そしてまた新たな出会いをして・・・というのは、世の中にいくらでもある連鎖。
生物の教科書に載ってた「食物連鎖」みたいなシンプルなぐるぐるが続いていく。
でも、いつまでも子供でいられないし、恋愛より仕事から得る「好きな自分」みたいな
部分もでてくるし、だんだん、相手のみならず、恋の仕方も変わっていくというか・・・
地に足がついていくプロセスが描かれた小説といえましょう。




その大きな流れもなかなか心地よく読んだのだけど、私が一番読んでいて、
これ、16~17年前に読んだら泣いたな、というか、自分が書いたの?と
思うくらい、感情移入してしまったくだりがあった。それは、最初の章で、
「くまちゃん」と出会う前に、学生時代の失恋を苑子が振り返る場面で・・・

サークル公認の彼氏らしき男がいたのだけど、彼が同じサークル内の
新入生・香乃子に心を移してしまい、だんだん嫉妬にハマっていくプロセス(全体的に
泥沼加減が凄くリアルに描かれている(ちなみに冒頭から6P目あたりから)。
相手のほうが可愛くて魅力的で、私は負けてしまうのじゃないか、という気持ちで
苑子はある情けない妄想にとりつかれる。

私と香乃子が、百人の男たちの前に立ったとしたら、いったい何人が
私に票を入れてくれるだろう。十人か、五人くらいではないのか。
考える内容のくだらなさに気づきつつも、そんなことを思い始めると
止まらなくなった。


私も、似たことがあった。
大学時代、クラスの男の子と付き合っていた。私の学科には、あまり、クラス内で
付き合う文化が無かったようだし、入学直後だったので、隠しておこうということに
なった。今思えば、不倫でもなんでもないし、キャンパスラブ(古い?)なんて
おおっぴらに楽しんで何ぼ(レジャーの一環として)な部分もあったはずなのに
彼氏に言われて素直にうなずいたのである。というわけで、大学の最寄り駅は
高田馬場なのに隣の新宿でわざわざ待ち合わせしたり、そういう風にして内緒で
お付き合いしていた。すると、クラスの飲み会で、男子たちが「好きな女子は
誰だ」的トークを始め、「〇〇(彼氏)は、△ちゃん(お嬢様っぽいクラスの子。
なのでもちろん飲み会の席などにはいなかった)のこと入学したときからずっと
片思いなんだもんね」とぶっちゃけられてましたよ友達に(笑)。その場では
別の人と話し込んでいるふりをしてスルーしたけど、胸が痛かった。

私とつきあってることは隠すべきことで、△ちゃんに片思いは堂々とって、
なにそれ?

△ちゃん(高嶺の花)に苦しい片思い>私(安い女)と交際している

もう、一瞬で不等式が頭の中に立ち上がって、その日のビールは苦かった(笑)。

彼の心の中でだけなら、いいんだけど、それって、うちのクラスの中では
誰が見ても

△ちゃん>>>(超えられない壁)>>>ワタクシ

ってことじゃん!と思い、もう、クラス最低の女の烙印を押された気分。

で、脳内には勝手に円グラフが立ち上がって、消えなくなった。

その辺の男子100人に聞きました

△ちゃんと付き合いたい・・・95人
私と付き合いたい・・・0人
どっちとも付き合いたくない・・・5人
みたいな、ザ☆ネガティブなやつが。

まあ、それが直接の原因にはならなかったけど(私は、△ちゃんに好きなだけ
アタックしたら?と言ったんだけど引き止められたので・・・でもそれなら
堂々と「とうこと付き合っている」といって欲しくなって、行き詰まっていった)
脳内で「自分は相手と比べて、世間的にもぜんぜん選びようのないしょぼい
ランクの女なんだ」と自覚せざるをえない場面って本当にきつい。

理性を総動員して「この学校のこのクラスが自分に合わないんだ」と
言い聞かせてみても、「付き合ってることを隠される貧相な私」という
自分に、自分自身と、そして彼が貼ったレッテルははがれることはなく、
だったら、そういうレッテルと関係ないところで頑張ろう、と勉強とかに
目覚めればよかったんだけど、ただ暗いだけの学生になってしまい、
大学生活は終わってしまいました(笑)。

今思えば、社内恋愛のときに周囲に隠す練習になったし(笑)、不倫の経験は
無いけど、そういう「秘めた恋愛」の苦しみみたいなのもわかっちゃったし、
青春はずたずたになったけど、まあ人生の経験値としてはありかなーと
振り返れるけど。
そこで、変な社会運動とか怪しい信仰(入学式で麻原のパンフレットとか
当時配られていたっけ・・・)に走らず無難に卒業できただけマシだった、と
思うようにも、している。


が、リアルタイム真っ只中のときはなぁ。
いやー当時の19や20歳やそこらの女の「子」だった私には相当キツかった。


…って、角田作品について書き出すとなんでこんなに長くなるんだろう(笑)。
自分の古傷がうずく・・・だから嫌いだったのか?(恥)
今読むと、読んでてイライラした「対岸の彼女」なんかでも、同性の付き合いで
あんなこと、こんなことでつまづいたのかなーとか語っちゃうんだろうか。

なんかまとまらなくて長くて暗くてすみませぬ。

最近、モテさんが新しい仕事に前向きでイケイケなことを毎日言ってて
頼もしいなあ、男らしいなあ、と思っているのも本当だけど、景気も悪いし
うまくいかなかった時のことも考えたら?みたいなことを、つい言っちゃって
(心配してるのもあるし、なんか、成功してから言えばいいのにとも思ったり)
夫婦仲が灰色で、そういうのも、古傷にくるのよね。無条件で手放しで
「好き! 尊敬してる! なんでも応援しちゃう!」というタッチの南ちゃん的
能天気妻に(なりたくないけど)なれないなあ私ってば、とか。

かわいげのある人になるには、生まれ直すしかないな、こりゃ。
by tohko_h | 2009-04-12 23:33 | reading