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「ステップ」 重松清

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「ステップ」重松清
結婚3年目の妻が突然の
病で亡くなってしまった。
30歳でシングルファーザーに
なった父と、幼すぎて母を
亡くした自覚さえ無い娘の
2人家族の日々が始まった…
そこに、妻の両親や義兄夫妻、
保育園の先生や会社の上司
などが関わってきて…シンプルに
生きていくって何だろう、そして
死んでいくことというのは・・・と、
問いかけるような小説。


実は、昨年くらいから、ニガテだった角田光代と重松清を好きになりたいと
切実に思っている。なぜかというと、このふたりって多作なんですよね。
売れっ子で、多作。というと東野圭吾あたりも入るかな。とにかく、私の好きな
横山秀夫は昨年1冊も新刊が出なかったし、三浦しをんだって小説を出す
ペースはそう早くないほうだ。1冊を割とハイペースで読み終えてしまう私に
とって、好きな作家さんが多作じゃない、というのは、結構切実。ならば、
多作な作家さんのファンになって(しかも今まで読んだことのない人なら
既刊がたくさんあるので当分楽しめるはず)しまおう、とやたら前向きになって
みた。しかし、重松さんの「疾走」も「ビタミンF」も、「ナイフ」も、なんだか
道徳の教科書読まされてるみたいで、しっくりしなかったんですよね。
さくさくと小気味よく簡潔な文章はとても読みやすいんだけど、その中に
描かれている世界は、なんだか、人生経験が豊富で頭の良い話し上手な人が
頭の中で作ったストーリーを上手に聞かせてるみたいな印象で、どこかしら
鼻につく感じがして。しかし、カバーのイラストが可愛かったのと、最近読んだ
雑誌の書評欄などでほめられてるのを立て続けに2~3みかけたので
「よし、重松清に再チャレンジ」と相成りました。

物語の最初のころには30歳そこそこの若いお父さんと2歳の赤ん坊だった
父娘が、40代の父と小学校を卒業する娘、になるまでの10年間を
1年ごとに1章ずつ費やして丁寧に描いているといった構成。
親戚、友達、会社の人たちなど、ふたりを取り囲む脇キャラもいかにも
それっぽい。途中、漫画好きなので、父娘のある程度都会での家庭生活って
ことで「Papa told me」(榛野なな恵)を少しだけ思い出したりして。
どちらも、父親が娘に対して一途に必死に愛を与え続ける姿には
感動するんだけど、その反動で周囲の敵に対して大人気ないほどの
黒い気持ちを抱き、自分と娘が正しい、と独善的な考えかたをする、
という、ちょっといやなところまで似てた(笑)。

まあ、実際、泣きました。一番好きな脇キャラが最終章の主役みたいに
光るんだけど、その人をめぐる全てに泣きました。しかし、ぼろぼろ泣きつつ
「はい、ここは泣くシーンですよ」と著者に強いられてるような気持ちがして
なんとも複雑な気持ちになったのは確か。重松清の小説ってどれも私には
そう思えるんだけど、キャラクターにしても「この人は怖い人」「この人は
主人公を困らせるひどい人」みたいに、箇条書きのメモ見ながら書いている風な
役割分担がはっきりしすぎていて、だからこそぶれたり破綻したり矛盾した
言動ってのはないんだけど、全てが割り切れすぎていて、そのすっきりぱっきりが
「作り話じゃん」ってどこかさめちゃうんだなってことが分かりました。
さんざん泣いておいてあれだけど。結局、大切な人を亡くすこと、それだけ
大切って思える人と出会えたこと、どっちもあってこそ人生っていうのは豊かに
続けていけるんだよね、と、道徳めいた予定調和な感想を抱いてしまった(笑)。


今日、昼間のヤフーニュースで、私の世代(30代)の自殺率が高いという記事を
読んでショックを受けたあとに読んだので、真摯に人の生死と向き合おうとしている
主人公たちの姿はすがすがしく思えました、素直に。ただ、この主人公である
父親が、自分たちの境遇を理解してくれない人(ある年の担任教師とか色々)に
対して「お前が間違ってる。俺たち父娘のほうがきっと正しい」と、拒絶という
形をとって前に進んでいく傾向の話は読んでいてちょっとな、でした。なんていうか、
男性が子育てというイレギュラーな状況(世間的には)にあって、その
イレギュラーさ自体を否定して「これがうちは普通なのに」みたいに主張するのは
得策じゃないっていうか・・・
皆とは違うけどこれがうちのスタイルっていう感じに最後まで主人公がなりきれて
なかった気がして(娘のほうはかなりそのへん成長するんだけど)、この先、彼の
ほうが気がかりというか、どうなるのかな、って思いました。
by tohko_h | 2009-05-15 02:00 | reading