人気ブログランキング |

「欲しがりません勝つまでは」田辺聖子

a0079948_1201627.jpg
「欲しがりません勝つまでは」
田辺聖子
作家・田辺聖子が、自分の
少女時代を振り返って描いた
エッセイ集。
「生まれたときから戦争を
日本はしていた」という中でも
美人の先輩に憧れ、空想が
好きで、やがて小説を書き
始める、という文学少女気質
たっぷりだった若き日の著者の
姿には時代をこえた愛らしさと
キラキラ感がたっぷり。


戦争中、紙が不自由になり、セーラー服の生地が劣悪なものになっても
少女らしい素直な気持ちを忘れずに、日々一生懸命、そして楽しく
暮らしていた姿が生き生きと浮かんでくるような書きっぷりはさすが
田辺さん。当時書いていた小説もちらっとお披露目しつつ「出だしが
くどい小説はよくない」みたいにきっちりと自分で突っ込みを入れたり、
というユーモア精神もこの著者の持ち味。

しかし、戦局は悪化し、彼女の暮らす町の近くで空襲があったなんと
翌日に、天皇陛下がラジオで戦争に負けたことを国民に告げ、
日本は敗戦を迎えた。ここで、聖子の少女時代も同時に終わりを告げる。
敗戦にショックを受けた親にかわり、家族を支えねば、と、憧れの
職業だった女学校の先生をあきらめ、もっとお給料の良いところに
就職して、現実と向き合っていく決意をするのだった…ここのくだりは
文章もテンポアップしてすごく迫力がありました。
やがてそのOL経験が、一連の恋愛小説描くときにきっと役に立った
とは思うのだけれど。

というわけで、前半は、女子学生らしい華やかなキャッキャした空気を、
後半は、日本の敗色が濃くなり、やがて敗戦に至るまでの傾いていく
恐ろしさをしっかりと読み取れる、エッセイ=軽やか、という印象を
保ちつつも読みごたえのある1冊でした。

しかし田辺さんって本当に十代のころから書くのが好きだったんだなあ。
他のお友達と雑誌を作る(小説や俳句を載せてクラスで回覧するもの)
ことになって、ほかの人が「よくそんなに書けるね」というのを聞いて
書けないほうが不思議と思う、みたいな(笑)。楽しんで書いて
面白いものが書けるなんて幸せな作家だなあと思う。
by tohko_h | 2009-06-08 12:12 | reading