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「トーキョー国盗り物語」 林真理子

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「トーキョー国盗り物語」 林真理子
美貌を生かしてエリート男性に
嫁ごうと努力中の美保。
フリーライターとしてもっと
メジャーになりたいと願う絹。
何もない「普通のOL」と言われる
ことに抵抗を感じる笙子。
あるつまらないパーティーで
出会った3人の女性が、それぞれの
野心をあらわに語りあい、走り出した
ところから物語ははじまります。


このお話が世に出たのは1992年。17年前のこと。
それゆえに、26歳過ぎたあたりから女性が結婚で焦るとか、今の
「トーキョー」の相場とちょっと違うところもありますが
そういう、ディテールのギャップはあるものの、古い小説を読んだときの
「今は違うもんね」的な脳内注意書きを加えなくても、登場人物たちの
考え方、言動には素直にうなずいてしまうところがあってびっくりする。

美貌を生かして出会いを求め続ける美保の行動なんて、「コンカツ」と
いう言葉なんてなかったころから、こういう女の子いたんだろうな、と
思ったし、逆にいえば、今、メディアが「コンカツ」とあえて取り上げて
みているけど、きちんとした結婚がしたい、と目標を明確に持って
動いている人たちというのはいつの時代も一定数いるものなんだ、と
いうことがよくわかる。

普通のOLを脱出したいと願って笙子が飛び込んだのは、女社長が
経営する人材派遣会社(小説の中ではとても新しい業態みたいに
描かれてるけど今は「派遣」って皆知ってますよよね)だったり、
絹がいる出版業界が当時は結構気前よくバブリーだったり、という
彼女たちを取り巻く街や業界の姿は変わっているものの、その中で
目的意識を持っててきぱきと前進する力強さは、今の時代の
最先端で働く女性にも通じて、読んでいて痛快です。

…これだけ目的意識がはっきりしていた彼女たちが、全員、それぞれの
見ていた夢とは少しズレたところで何かをつかむ、という意外な展開、
それでいて皮肉なだけでは終わらない前向きさは、林真理子さんが
女性に優しい作家だな、と良い意味で思いました。
by tohko_h | 2009-07-06 11:43 | reading