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「ヴェサリウスの棺」 麻見和史

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「ヴェサリウスの柩」麻見和史
第16回鮎川哲也賞受賞作。
大学の解剖学研究室の
助手・千紗都は、実習中の
ご遺体から、ある異物を
発見する。それはマカロニの
ような長さのチューブで、
中には、園部教授を脅す
犯行予告めいた詩のメモが
入っていた…という衝撃の
導入部はインパクト大!


大学の解剖学の研究室、という閉ざされた場所が主な舞台で、登場人物は
医療関係者が多い、ということで、マニアックな話なのかな、と思い最初は
敬遠モードでおそるおそる読み始めたのですが、おそらく作者は、取材を
綿密に重ね、その成果をきちんと作品に反映させる律義なタイプなのであろう。
医学について何も知らない私にも分かりやすく親切な書き方だったので
なじみの無い世界の物語なのにぐいぐい読むことができた。それを
「うんちくが多すぎる」と取る人もいると思うので、そのへんは好みかな。

ただし。
最初の「ご遺体に仕込まれた脅迫状」から始まって、だんだん描写の中に
グロテスクで残酷な部分が増えていくので、生理的な怖さはある。
作中、ある登場人物が、古くからある遺体のプール(ホルマリンが入っていて、
その中に遺体を保存するためのもの)に沈められる場面とか、読んでいて
ホントに気持ち悪くなりました。

推理モノとしては、さほどどんでん返しというのもなく、探偵役の千紗都が
色々調べるにつれて事実が浮かび上がってきて…という割と普通の展開。
途中で、あやしいな、と思った人がやっぱり、って感じで意外性は無かったかな。

大学病院への献体とか、医学部の内部事情みたいなものが文系人間の
私には新鮮だったし、全体的にはなかなか面白かったです。





話変わって。

以前の私は、妹がとても羨ましかった。
新刊の本をざくざく読んでまわしてくれる姉(私)がいて、たいていの
ベストセラーなんかはそれで読めちゃうし、会社の同僚にもミステリファンが
いて、色々回ってくるという恵まれた読書状況が(笑)。


しかし、うちの会社にもいたのです・・・というか、上司にいらしたのです!
ミステリ小説ファンが。

先週の暑気払い的飲み会で知りました。で、その人のデスクの傍らに積んで
ある本(書店のカバーがかかってたので全部、難しい資料とかなのかなーと
なんとなく思ってた)が、ほとんど読み終えたミステリ本だそうで(おそらく
通勤のときに読んじゃうんでしょうね)。しかも日本の作家オンリーですって
(私は海外ものを読まないのでそれも都合がいいというか嬉しい情報)。

で「好きに持ち出して読んでいいよ!」と言っていただけました・・・(嬉)!

さっそくその宝の山に匹敵する本の山を見ると、東野圭吾などの有名どころから
トラベルミステリー、本格派系、新人の受賞作などあるわあるわ。
よい意味で雑食、広い意味のミステリー小説好き、な感じ。
書店で「ちょっと面白そうだけどハードカバーだしなあ」と記憶に残しつつ
買わなかった本をたくさん発見。さっそく週末に数冊貸していただくことに。
なんか、「更級日記」で、親戚のおばさんに、源氏物語とか絵巻物を
たくさんもらった主人公が「妃の位も何にかはせむ」(この幸福感に
比べたらお妃の位なんてナンボのものかしら)とはしゃぐ気持ちを
体験しちゃったような・・・

というわけで、これからはしばらく、ミステリー中心の偏った読書を楽しむ
ことになりそうです。
by tohko_h | 2009-07-11 08:11 | reading