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浅田次郎「ハッピー・リタイアメント」

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「ハッピー・リタイアメント」
浅田次郎
中小企業に資金を貸す
公的な団体に天下った
元財務相官僚&自衛官の
熟年男性コンビ。
タテマエ上は、大昔に
貸して踏み倒されたお金の
回収が仕事だけど、実際は
「9時から5時まで座ったり
お昼寝してれば給料と、
第2の退職金は保障する
(第1の退職金は彼らはすでに
元の職場からもらてる身)」という、きわめて安全な場所にいる窓際族待遇
なのだった。しかし、その団体の胡散臭さを感じるようになり居心地が
悪くなってくる2人。鈍感な人ならそれに慣れていくはずなのだが・・・
そのとき、秘書の女性・立花葵が「仕事しよっか」と声をかけてくる。
そして、ふたりはそれぞれ、本来の仕事…かつて貸した資金の回収に
出かけるのだった。成功したがケチな作家、セレブ女性、社長…
かたや、首を括るかどうか悩むレベルの貧しさにあえぐものもいて…

このお話は、浅田さんのところに実際に、こういう資金回収に来た人たちが
いたところから思いついた小説だそうです。愚直で憎めない昭和の遺産
っぽいおじさんを書かせたらほんとに上手い浅田さん。そこにからむ
トウのたった可愛い女性・葵のシニカルだけど乙女な部分とかも魅力的。
彼らを牛耳る悪代官っぽい理事・矢島の俗物ぶりとあわせて、見事な
人物配置です。一番面白いのは、ふたりがあちこちに借金を回収に行く
シーン。お金を借りた時はどん底だった人たちが今は違う人生を得ている姿、
そのころのことを忘れようとする者、悔やんでる者、振り返らないと決めた者など
それぞれの反応が人間くさくて印象に残ります。

少し野暮ったいところもあり親しみやすい大人のユーモア小説。
ただ、現実社会が相当不景気な今、暇してて退職金が貰える彼らは
そのままでも運のいい人たちなんじゃないかな、と、俗物でお金への
執着が強い私なんかは思ったりもするのでした。
これ、NHKとかならうまくドラマにできるかもしれない。土曜日の
21時の枠でコンパクトに。

著者インタビューに、浅田さんが本書の中に盛り込んだテーマなど
色々書かれているのでリンクはっておきます。


「ハッピー・リタイアメント」とはいかなるものか
by tohko_h | 2009-12-01 13:27 | reading