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「私のこと、好きだった?」 林真理子

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「私のこと、好きだった?」林真理子
光文社STORYで連載されていた、
揺れまどう40代を描いた物語。
ヒロインは、42歳の局アナ・美季子。
若い女子アナの管理職的な業務や
ナレーション仕事がほとんどの
「女子アナ30歳定年説」に依ると
既に終わっている大ベテラン。
彼女の大学時代の友人カップルは
夫側の浮気が原因で離婚、妻は
病魔にむしばまれている…


林真理子は女子アナが好きなんだなーと思う。
かつて、美里(田丸)美寿々をモデルにした「幕は下りたのだろうか」で
アナウンサーの女性がキャスターになりたくてもがく話を描き、
「断崖、その冬の」では、地方局でやはり若さのピークを過ぎた
女性アナウンサーが、野球選手とあいびきを重ねていく恋愛を描いた。
そして、今回は再び舞台はキー局へ。

バブルの経験もあり、マスコミではクールビューティーと持ち上げられてきた
美季子だが「普通のしあわせ」を手に入れられていない感覚に時々囚われ、
町を歩く平凡な主婦になった同級生を見て「ああなれなかった自分」を思う。

浮気な男性編集者の「ケンちゃん」は、妻を捨てて娶った若い2番目の妻に
「(あなたを前の奥さんから略奪したからって)私はいつまでも幸せに
なってはいけないの?」と問い詰められ、追い込まれていく。

本来、誰の人生も同じものはなく「平凡」とくくるのは傲慢なことだが、彼らに
とっては、自分たちは選ばれたややこしく乗りこなすのが大変な波が次々と
押し寄せるハードな人生を生きていくために「自分たちは特別」と思いこむしか
すべがなかったのかも、とふと思ったりした。

たまに、自分で自分を特別って言っちゃう人がいて、そういうのを見てると
「いや、別に、そんなあなたすごくないし」とか意地悪を言いたくなってしまう
こともあるんだけど、今度からは「あーこの人、自分が特別な人間で、自分だけが
大変って思わないとやってけないんだわ」と、余裕を持って眺められる気が
しちゃいました。

この小説、お話としては、ヒロインの仕事や恋愛に次々とアクシデントや新展開が
訪れて、さすがもと雑誌連載だけあって小さな山場が続くので、最後まで飽きずに
読めます。おしゃれなレストランや洋服などの描写はそう多くなく、その代りに
リアリティのある会話部分が増えてて、林真理子自体もバブルをいつのまにか
卒業してたのね、みたいな読み方もできるかもしれません。
by tohko_h | 2009-12-18 17:15 | reading