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「スノーステーション」篠原 高志

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「スノーステーション」篠原 高志
それはクリスマスイブのこと。
猛吹雪であらゆる機能が
ストップした青森駅と、大停電で
青函トンネルの中で停まって
しまった列車。駅では、手術を
控えた白血病の少女や、明日
大学入試本番を迎える受験生、
漫才師をめざす男の子たち、
などなど、一方、列車の中には
総理大臣や夜逃げ志願の、
事業に失敗した男などがいた…


いかん、このあらすじの文章だと、タイタニックばりの、自然の驚異の中で
無力な人たちがいたぶられる系の話みたいだ、失敗失敗。

青森駅で働く誠実な鉄道マンや、トンネル内の闇の中でけなげに
がんばる若い車掌女子など、とにかく、JRの皆さんの頑張りぶりが
ひたむきでいいんです…と書くと、なんか、プロジェクトXみたいだ。

偶然、駅という場所に居合わせた人たちの人生が、自然という抗いがたい
力によって少しずつずれたり、触れ合ったりして、また、列車の運行が
再開して、それぞれの場所に旅立っていく。そんな感じのお話です。

駅員の前に昔の彼女がふいに現れたり、傲慢な政治家秘書とこわもての
女駅長のバトルが繰り広げられたり、自殺志願の女子高生の隣に、
白血病で命の危機を実感して生きている幼い少女が座っていたり、
あらゆる出会いとぶつかり合いと、そして次第に助け合いが広がっていく…
出てくる人たち全員が主役みたいな小説です。後味の良いスカッとする
小説が読みたいときに、ぴったり。嫌な人は出てくるけど、ほんとうの
悪人はひとりも出てこないし、聖人君子も出てこない。みんな、近所に
いるかもしれない、こういう人、と思える親しみやすい人たちばかり。
彼らが、寒い寒い駅や列車の中で、少しずつ幸せになる、
そんなハッピーでかわいいお話でした。これ、JR全面協力で映画とかに
ならないのかな。読んでいる間、ずっと「この駅員はあの人だな」とか
「この看護婦さんはやっぱりあの女優さんがいいな」なんて、脳内で
ひとりキャスティング会議、盛り上がりました(笑)。

今年のベストかも、とひそかに思ってます。夢中でお風呂の中で手が
ふやけてしわしわになるまで読みふけりました♪
by tohko_h | 2010-02-17 00:32 | reading