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2006年 08月 23日 ( 1 )

高村薫「照柿」

「照柿」(上)(下)
文庫版の「照柿」を読みました…今回も、入り口がわからないでぐるぐると
物語の周囲をめぐっているだけのようにしか読めない高村作品。面白いつまらないを
語る以前のところにいるままで、全編読んでしまいました。

「マークスの山」で登場する合田刑事の、幼馴染と、一目ぼれした女。
男がふたりに、女がひとり。3人の魂が、照柿色という赤色に染まるとき
悲劇は起こる…。
合田の幼馴染の野田は、35歳。工場で炉の炎を見つめ続けて17年間平凡に
生きていた。しかし、葡萄のような美保子の瞳に吸い込まれそうになった野田は
運命のいたずらのように堕ちて行く・・・美保子も、亭主がいながら野田についてくる。
そして、ある事件現場から立ち去ろうとする白いブラウス姿の美保子に、合田も
一目ぼれしていた。幼馴染の野田と関係を続けていた女だとは知らずに…

というわけで、今回は、合田の恋愛と、子ども時代の話が出てきます。
この話の合田、強盗事件の犯人を追うために賭博に参加してみたり、美保子の
誘惑的な態度にぐらついたり、かなり危うい感じに描かれています。おそらく
「マークス」の追い詰め執拗系の合田にほれた人は、人間くさく、ドロっとした彼を
知って、この世界にハマっていくんでしょう(と他人事のようにしかかけないのが
なんとも情けないですが)。
高村さん、女性作家なのに、女性キャラの描写が男性のように冷酷で嫌な面も
突き放して書いてるのが、読んでいてすごかったです。学校の先生として平凡に
暮らしていながら嫉妬深いところもある野田の妻も、流されるままに生きて
いるようで強く激しいものを秘めている美保子も「マークスの山」に出てくる
ナースより全然リアルで近しく感じました(それもやばいかな)。
好きキャラは、合田の元義兄かなあ。
by tohko_h | 2006-08-23 22:04 | reading