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2007年 08月 21日 ( 1 )

「憑神」浅田次郎

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「憑神」 浅田次郎
久々の浅田次郎。
忙しい時期に買ったまま
放置しておいたので、先に
母と妹に貸したら「すごく
面白かったよ!でも映画の
キャストを知ってる状態で
読んだので勝手に脳内で
キャラの顔が決まっちゃって…」と
絶賛の声とともに戻ってきたので
早速、読んでみました。


下級武士の次男坊・彦四郎は、文武に優れていたところを見込まれて
婿入りし、妻とも仲むつまじく暮らしていたが、やがて息子が生まれると
「跡取りもできたし」と独りいびり出され、貧乏な実家の居候に。
家督を継いだのんき者の兄と、口うるさい兄嫁と、兄夫婦の息子。
そして年老いた母と暮らしているが、窮屈で居心地はいいとは
とてもじゃないけどいえない状態。
ある夜、榎本武揚らが三囲稲荷というところに拝みに行ったら出世した、と
なじみの蕎麦屋で小耳に挟んで、自分もちょっくら行ってみようか、と
神頼みに稲荷へ。しかし彦四郎が手を合わせたのは、似てるけどちょっと違う
三巡稲荷…その名のごとく、三度巡り来るのだという…ご利益ではなく、
とんでもない不幸が! 裕福な商人の外見をしている貧乏神、
立派な力士の姿をしている疫病神、そして意外な外見の死神が
それぞれ彦四郎の前に次々と現れて、家族や周囲をかき回していく・・・

という江戸時代末期のファンタジー。貧乏神と疫病神のくだりの
途中までは、洒脱で気が利いていて、少しユーモラスでさえあり、
テンポよくドタバタと話は進む。ところが、途中から、「人間はそんな
簡単じゃないんだよ」と浅田さんが語りかけてくるような深い話になってくる。
軽薄だと思われた兄がとても思慮深い一面を持っていたとか、頼りないと
思っていた武士の後輩がある面ではとても頼もしい男だったとか、
神様の起こすアクシデントをきっかけに、彦四郎はいろいろなことを知り、
そして文武に自信を持ち、自分を磨いて貫いてきた武士としての道について
考え、そして悩み、ある決心をする・・・

神の力に翻弄され、生死のはかなさを知った彦四郎が、神のように
何千年も生き続けるのではなく、人間ははかないものでその命は
限りあるからこそ輝くのだ、と知るまでの心の軌跡は感動的。

それにしても、浅田次郎(と、ついでにつかこうへい)は、ラストシーンの
盛り上げ方が異常にうまい。うますぎる。
心拍数を上げ、涙腺を破壊するなんて、お手のものだ。
「泣ける本」として売られている本はこの世に結構多くあるけれど
「泣かされる本」として電車の中だろうと会社や学校の机の下でこっそり
読んでいようと容赦なくぐちゃぐちゃにされてしまうのが、また嬉しかったり。
ちょっとMッ気をちらつかせつつお薦めの1冊☆

浅田小説の読後感にもれなくついてくる「明日からちゃんと生きよう」という
元気が心の中から立ち上がってくる感触もしっかり味わえます!
by tohko_h | 2007-08-21 23:44 | reading