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2007年 11月 15日 ( 2 )

本屋さん用メモ

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おとなの週末 購入済
by tohko_h | 2007-11-15 07:48 | reading

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「望みは何と訊かれたら」
小池真理子
外見も内容も分厚い1冊。
ファーストシーンは、
ふと訪れたパリ郊外の
美術館で、かつて奇妙な
同居生活をつかのま送った
男と再会するヒロイン・・・
という、怒涛の恋愛小説の
始まりを予感してしまわず
にはいられない王道っぽさ。


そして、物語は1970年代の回想へ。それは、彼とヒロインの
甘い恋愛メモリーなんかじゃなかった。仙台から出てきた彼女は、
大学のサークルに入るような感覚で学生運動の輪に加わり、
その仲間の男と恋をしたりする。そして、更に過激な団体の
リーダーであるカリスマ性を帯びた男とも親しくなっていく…
こうして、友達のつきあいで軽い気持ちではじめた学生運動の
女闘士として、大学からドロップアウトして、組織のルールや
人間関係で、世界が狭まっていくヒロイン。議論でグローバルな
ことを話したり野望を燃やしたりしていても、彼ら、学生運動家たちの
世界は、グローバルどころか、ものすごく狭いような気がした・・・

やがて、グループは、誰にも止められない狂気の渦に巻き込まれ、
ついに、総括という名のもとに、人として越えてはいけない線を越える日が
やってきた・・・その恐怖におののくヒロインを救ったのが、美術館で
再会した彼…2歳年上の吾郎だった。19歳で全てに疲れ果てていた
彼女に救いの手を差し伸べた彼。それは愛ではなかったはずだ。
だけど、お互いの心には、消えない痕跡を刻み付けるのに十分なだけ
ともに暮らした一時期・・・

というわけで、簡単に言えば、学生運動でボロボロになったところを
助けてくれた2歳年上の男と、すっかり今は落ち着いて普通に生きている
ヒロインが再会して、というだけの話である。しかし、この1970年代の
学生運動真っ只中の学生の空気感とか、議論で難しい言葉を
ぶつけ合いながらどこか子供っぽいところとか、そのへんの描写が
とても迫力があって、もう、その中に自分がいるみたいだった。
暗いアジトで、寝袋にくるまって、革命の夢を見て、つまらない仲間の
男に襲われそうになる…そしてカリスマに抱かれているほかの女に
嫉妬を燃やす…ヒロインの置かれている場所は、自分の生活とは
時代も何もかも違いすぎていて、想像もつかないはずなのに、
ヒリヒリしてくるのだ。若気の至り、で済ますにはあまりにも
間違いすぎてしまった運動家たちの姿がとても印象的。
読んでいて、気持ち悪くなりそうなくらいの迫力。

そして、もうダメだ、というときに助けてくれた男とヒロインの関係。
閉ざされた家の中で、安息と不安が交錯して、彼に頼るしかない彼女が
だんだんその暮らしに慣れていく様子も、ある意味怖くて、読んでいるだけで
震えが止まらなくなりそうだった。監禁ではないけど、飼育されるように
男と暮らすヒロインの心の空洞が広がり、ゆがみ、そしてねじれていく
描写は本当に見事。

小池真理子はその卓越した物語力(実際だったらちょっと陳腐かも、と
思う恋愛話も、この人の筆を通すと見事な詩のように美しく力を
持つのだ、不思議と)を通してひとりの女性の愛憎の軌跡として
1編の恐ろしくも引力のある小説に纏め上げてしまった。
怖い小説である。そしてこんな話を描いてしまう作家の才能も。


(自分的プライス)
定価 ¥ 1,995 (税込)→自分的プライス 1575(≒79%)

読後感も重たくて、読んでいる間も「すごい本読んでるなー」と
どっぷり浸って読書そのものを楽しめるすごい小説。でも浅田さんのより
高いってのは・・・という個人的思い入れにより約8割の値付けに。


更に新企画(すぐやめるかも、というか本によってはムリだけど)として
今回から、同じ題材とか同じ作家の別作品とか「こちらもいいよー」という
関連お薦め本も、簡単ではありますが、ちょこっとご紹介なんかして
みようかな、と思います。題して「類書はいかが?」(仮)←いい題名、
誰か思いついたらお願いします(笑)。類書ルイルイ、とかもう、
ろくでもないのを10くらい考えて挫折してしまったので・・・

(類書はいかが?)
「飛龍伝―神林美智子の生涯」 つかこうへい
名前からして、安田講堂事件で犠牲となった樺美智子さんに着想を
得たと思われる、つかこうへいさんの代表作。筧さん演じる機動隊員と
美しく若い女優さんが演じる美智子のロミオとジュリエットのような
それでも愛してしまう強さと哀しさがすばらしい芝居(私は広末バージョンで
観ました)。集英社文庫から出たこのバージョンは、小説になっているので、
もとの芝居を知らなくても問題なく読めます。
「冬の伽藍」小池真理子
小池作品で自分はこれがベストだと思う。直木賞受賞作の「恋」も
見事に人間の心のあやうく妖しいうつろいとそれによって疾走していく
悲劇へのストーリーはすばらしいけれど、この「冬の伽藍」は、
大人の男女が冬の軽井沢という閉ざされた世界で展開するので
空気の張り詰め方が怖くて美しいのです。哀しい過去を持つ
薬剤師の女性が出会った誠実な医師と、その父で好色な男…
ひとりの女とふたりの男が出会って狂いだす運命の歯車。
ラストシーンが美しいというのもポイント高いです。
by tohko_h | 2007-11-15 00:23 | reading