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2007年 11月 22日 ( 1 )

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「仏果を得ず」
三浦しをん
文楽ファンとしても知られる
三浦しをんが描いた、
若き太夫&曲者三味線の
コンビを中心に送る、
伝統芸能青春小説!
スポーツや演劇、音楽の
世界を舞台にした、
青春熱血小説は多いが、
文楽ですよ、文楽。
しぶすぎやしないか??


書店で、「うわ、三浦しをんの新刊だ、待ってました!」と
即買いして、買ってから「文楽で、青春で、熱血?」
(帯に「若手太夫の熱き青春と書いてあった)と、ちょっと
ためらってみた。たとえば私はサッカーについて知識が
まったくないので、サッカー小説の名作がある、と聞いても
ちょっと読む気にはなりにくい。それと同じで、大丈夫か?自分、
と一瞬不安になったのだが(私の伝統芸能の経験といえば
1度上司の好意で連れて行ってもらった歌舞伎のみである)
・・・しかし、思い出した。
あの名作「風が強く吹いている」を読む前も「私、箱根駅伝って
興味ないんだよなー殆ど。読めるのか自分?」とためらって
1ヶ月近く寝かせておいてから読んだんだっけ。
きっと、知らない世界だからこそ、知る喜びもあるんだろう、と
思い直して、やはりすぐに読んでみることにした。

カバーの絵が少女漫画風のキュートなイラストなことからも
分かるように、小説のタッチも、軽めで、マンガのように
すらすらと読める。太夫(ボーカル?)と三味線(ギター?)と
人形遣い(パフォーマンス?)の3者が生み出す世界。
それに憧れてやまぬ太夫の健(たける)は、兎一郎(といちろう)と
いう、腕はいいけど変人!の三味線と組むように師匠に言われる。
主役を演じる太夫と組めるほどの実力者の兎一郎とまだまだ
駆け出しの自分では、力がつりあってないし、気も合いそうに
ないし…うーん困った。しかし、それでも、稽古や舞台を通して、
健と兎一郎はお互いの芸への想いをわかりあい、磨きあっていく。

そこにからむ、個性的な長老たち(人間国宝もいる素晴らしい
師匠たち)や、健の恋や、師匠と奥さんの痴話げんか、など、
いかめしそうな伝統芸能に従事する彼らの人間らしい
エピソードはひたすらコミカルで愛らしい。だからこそ、
芸へのひたむきさが引き立つ。そのへんのバランス感覚が
三浦しをんはとても上手だ。笑いと本気部分のパートが
ケンカすることなく、どちらかがどちらかの雰囲気を壊すことなく
見事にひとつのストーリーを構成している。

また、それぞれの章で健たちが演じる文楽の演目と、そのときの
心情が見事に重なって、役の習得に繋がっていく、というのも
面白いと思った。例えば、推理小説で、刑事が、子どもや奥さんの
何気ない一言で事件の真相に気づいて「そ、それだよ! 今の
もう1度言ってくれないか?」みたいに言うパターン!
健が役をつかむシーンはあれに似てます。周囲の人たちや自分の
心を理解することで、江戸時代のお侍さんやお姫様になりきれる
(マンガを愛する三浦しをんさんが「ガラスの仮面」を読んでないわけが
ないので、そういうのもイメージされたのかもしれない・・・と
勝手に妄想してみたり)。

正直、1章目あたりは、文楽についての説明(最低限としても)部分も
結構あるし、テンポがゆっくりしていて入り込むのに時間はかかるが
すぐに加速するので、大丈夫。

定価¥1,575 (税込)→自分的プライス¥1,680(≒107%)
あと100円くらい高かったとしても面白いと思えたでしょう。
カバーもそうだけど目次の装丁も可愛いくて凝ってるし。

そして、最近勝手に始めた類書紹介コーナーですが、類書はいかが?じゃ
芸がないので、参考になるかもっていう本、あるいは、この本のあとに
散歩するようにこっちもふらっといってもいいかもーって本、ってことで
参考本、散歩本、を略して、さんぽん、と勝手に呼んでみます。
てなわけで、

さんぽん(参考本or散歩本)
「あやつられ文楽鑑賞」三浦しをん
三浦しをんによる文楽入門書。太夫さんたちへのインタビュー、
有名な演目の解説(仮名手本忠臣蔵)やあらすじの紹介、
更に、同じ演目を歌舞伎と見比べたときの違い、などなど、
1冊まるごと文楽について書かれている。これを先に読んで
いたので私は割と入り込みやすかったんだけど、逆に、
「仏果~」を読んでからこっちを読んでも面白いかも。

※「きのね」宮尾登美子
歌舞伎の家にお手伝いさんとして入った女・みつの波乱の人生を
描いた小説。伝統芸能に疎い私ですが、面白く読みました。
朝日新聞で昔連載していたのですが、毎日楽しみだったの。
みつが使えるスター役者は、海老蔵のご先祖様がモデルらしいと
知って、年末年始に再読を検討中です。
by tohko_h | 2007-11-22 11:36 | reading