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2009年 08月 29日 ( 1 )

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「そこにいる人」矢口敦子
19歳の直子の家は、肝臓の病で
家でいつも寝ているしかできない
2歳年上の姉・幸恵を中心に
動いている。姉の移植のために
お金をためるべく働く父と、
塩分を調整した食事や体調を
気遣い続ける母。次女の直子は
いつもかやの外にいるような、
ひとりでいるよりも深い孤独を
感じずにはいられない。


大学に通い、気になる人もでき、人並みの19歳として生活したいと
願いながら、姉の体調の悪化やそれに伴う家からの電話を気にして
コンパにいっていても携帯電話を切れない直子。
ほとんど学校に行かずふわふわと世間知らず風に育った姉に
苛立ち、両親が姉ばかり気にかけていることも不満に思っている。

こういう病気ものって、家族は優しくて面倒見がよくて当たり前風に
病気に苦しむ主人公の絶対的な味方として描かれることが多いけど、
この小説は「病気の家族を持ってしまい、平凡な日常を送り損なって
しまっている普通の女の子」がヒロインなのがきれいごとじゃなくて
リアルだな、と思った。

お話をキレイに悲しく盛り上げるためじゃない姉の「病気」という設定は
やがて、直子を意外なところに連れて行く。これといった結論や
主人公がいきなり前向きに成長する、というドラマティックな展開は
ないし、比較的短め、軽めの小説だけど、読後感は重たい。
病気の話、というより、家族とか人間関係の難しさ、取り返しのつかなさを
描いたお話。

あ、薄くて読みやすいという意味では読書感想文にも割とむいてるような。
by tohko_h | 2009-08-29 23:07 | reading