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2009年 12月 05日 ( 1 )

ヒキタクニオ「女たち」

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「女たち」 ヒキタクニオ
ヒキタクニオの描く女の子って
割と好きなので、さまざまな
年齢や職業の女たちを描いた
短編集!こりゃいい、と早速
食いつきました。うまい。
うまいんだけど、なんだか
明日会社に行くのがいやに
なりそうなダウナー系の
小説集。「ベリィ・タルト」とか
「青鳥」的なものが私好み
なので、ちょっとこれは、すごい
けど好みとは違ってました。


では、この本に出てきた「女たち」を紹介いたしましょう。

「霞網」
消費社会に踊らされてるだけだ、とある日気づいてしまった20代OL。
限定ランチもレディースデーのお得なコラーゲン鍋コースも、
おしゃれな情報を盛り込みすぎてる人気のドラマも、すべて
財布の紐を解かせるためだけの装置にすぎないんじゃない?と
すべてが馬鹿らしくなるのだった。
私、これ読んだ日に西武デパート行ったけど何も買わずにすんだ。
それだけですごい作品かもしれない(笑)。

「私の憂鬱な日々」
友達の彼氏を寝取ることが好き。というか、そうしたくてたまらなくなる
ある「ビョーキ」を抱えた一般職女子会社員。尊敬する親友の彼氏を
紹介してもらい、また悪い虫が…職種、学歴、容姿その他もろもろで
格付けを無意識にせずにはいられない女社会のせちがらさ…というと
昔は林真理子の得意なジャンルだった気がするんだけど、男性作家が
スコーンと描いちゃうものなんだなあ。なんかすごい。

「悲しき女子大生」
大学3年生のおわり。地方の優等生→都内の名門大学に埋没した
地味貧乏学生、という道をたどっているヒロインは、就職課の女性や
教授や親友とのやりとりで卒論や就職への考えを改める。
東京に出てくればおしゃれで楽しい毎日が、という田舎女子が
陥りがちなファンタジーとそれが崩れたあとのやさぐれ感が
他人事とは思えなかった。これは後味がよい系。

「東京カワイイ中毒」
借金を背負ってしまい、ヤクザにある任務を負わされるキャバクラ嬢。
だって、かわいいことってお金がかかる。ネイルも、ドレスも、
髪を盛るのにも…私、どうなっちゃうんだろうこれから。という
女の子の転落ストーリー。借金があるのに、新しい任務で「ちょっと
地味にしてきて」といわれて新しいワンピースを買っちゃうとか
ヒロインのどうしようもない馬鹿さ加減が悲しい。そしてその
馬鹿さ、間違ってるところを分かりつつ共感してしまったり。

「男たちよ、泣くな」
出版社の中で社内恋愛→結婚したカップル。夫は営業、妻は文芸の
編集者。作家の接待で朝帰りが多い妻を苦々しく見る夫…作中で
女性作家と女性編集者が「仕事相手など、危ない男とあやまちを
犯さないための精神的なガード」みたいな話をするんだけど、私は
どんなに素敵な人も、仕事でであった時点で「異性」にあんまり
見えないのでそのへんよくわからない。実際に同じ社内にいたら
部署が違っても、夫があそこまで妻の編集としての仕事について
いちゃもんつけるかなー。んー、とか想いながら読んだ。

「老人と久美」
タイトルはダジャレですね(笑)。親の離婚問題に巻き込まれて、
とりあえず母方の田舎に預けられた十代の久美が、退屈な
夏休みに出会った老人は実は…という、切れ味のいいオチ
(読んでるうちに層化ナーとは思うんだけど)が小粋。大人の
自分勝手に振り回される少女の鬱屈と、夏休みという明るい背景の
対比が印象的。

「半分愛して」
デザインの仕事で成功した彼と結婚できた。彼はカッコよくて、
大金持ちで、成功者。その男の妻になれて幸せなはずだけど、
本当は、さびしい。私が彼を「好き」って想ってるのと、彼が
私を「好きだよ」って言ってくれてるのって、意味が違いすぎて…
配偶者に片思いしているヒロイン。一緒に暮らせるぶんだけ
幸せなのか、近くにいるからこそ不幸なのか。割とよくある
設定なんだけど、最後の腹のくくり方が、すごい!

「苦々しい16歳」
私は現役女子高生。友達は、なんちゃって女子高生(中退したから)。
でも私たちは仲よしだし、援助交際やおやじとカラオケに行く「もどき」
のときも、いつでもいっしょ。なんだかよさそうな「客」が見つかって
ふたりでホテルに出向くことにしたけど、それがとんでもない展開に
なってしまい…意外な結末。今もまだこういう女子高生いるのかな。
「苦々しい」って文字で書くと「若々しい」と似てるよね。うまいタイトル。

「私の出逢った男子」
34歳でフリーライターの私。恋人は8歳年下のデザイナー。
自分から好きになって、酔って「コーヒー飲まない?」と部屋に
連れ込んで「食って」、すぐに部屋に転がり込んできた。気が利いて
優しくていやされる、典型的な草食男子の彼。でもこのままで
私たちいいのかな…。このフリーライターの取材風景がすごい。
相手の女子高生を憎らしがり、タレントを「かわいく生まれてずるい」と
嫉妬して、結婚相談所に通うさえない女性たちを軽蔑する。
特に、さえない結婚相談所女子ふたりとのやりとりの薄ら寒さ…
割と昔からこういう、押し出しの良い頭の良い女の人と、積極的に
来られるとむしろほっとして付き合う若い男の子カップルって
時々いたよなーと思う。自分から男の人を誘える自信と度胸が
あるヒロインがうらやましい…。
by tohko_h | 2009-12-05 20:46 | reading