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2010年 03月 05日 ( 1 )

この時期に私が劇場へ…というと「ああ、帝劇で例のね」と友人知人一同には
割といわれるのですが、帝劇は、7月参戦予定でございます。ざんねーん。

さて、そんな感じで普段は観劇なんてしない方なのですが(演劇より映画や
テレビとか映像もののほうがどっちかっていうと普段は好きなほうかも)、
見てきました、黒木メイサ主演の「飛龍伝」。チケット取ったらなんと
前から3列目のセンター。

飛龍伝というのは、つかこうへいの代表作。
学生運動のカリスマ的存在である柏木と、彼に一方的に憧れていた田舎娘で、
全共闘40万人を束ねる委員長・神林美智子(実際に安田講堂で若き命を
散らした樺(かんば)美智子さんから取った名前なのは説明するまでもなく)、
そして、美智子の美しさ(実はメガネを取ると美人!という設定なの、このヒロイン)に
一目ぼれして、敵のはずなのに見守ってしまう機動隊員・山崎の三人の
愛憎劇に、全共闘の学生たちの熱さ、日本をよくしたいと願う人達のひたむきさが
ふりかけられた、ものすごく濃くて熱い伝説の演目である。

富田靖子や石田ひかり、牧瀬里穂に広末涼子、内田有紀、と、バラバラな個性の
女優が「美智子」を演じてきた。この役、何がすごいって、文字通り紅一点なので
ある。学生運動家たちに機動隊…ほかのキャストはみんな男性。彼らが踊り
殺陣を繰り広げる中、舞台センターからドーンと彼女が現れ、バキュン!と
指でピストルを撃つしぐさ(キムヨナサイドの人がまさかつか芝居を見てまねした
とは思わないが(笑))をする、という登場シーン…男たちを率いて、委員長として
君臨するのが美智子という女である。私が見たのは広末バージョン。いろいろ
見比べた演劇通の人なんかに言わせると「40万人の学生を率いる委員長に
見えない」という違和感もあったようだが、私は、地方から出てきてひとりぼっちの
女の子が委員長に祭り上げられて、普通の女の子のままその日…機動隊との
決戦を迎えるというせつない感じがむしろ好感が持てた。

で、今回の美智子は、黒木メイサ。もともとつかさんの劇団で修行をしていた
こともある彼女。目力と、若さに似合わない貫禄とカリスマ性…カッコいい委員長に
仕上がってることを期待して、チケットを取った。
アクションあり、下ネタあり、歌とダンスたっぷりのつかさんのお芝居が、
コンサバティブなイメージの新橋演舞場とは意外な感じ。
更に…柏木=春田純一、そして山崎=筧利夫、という鉄板のメインキャストが
(山崎役は、筧さんの「愛嬌」に賭けて作ったキャラだというようなことを
つかこうへい自身もあちこちで語っている。粗野で下品でバカで一途で
とんでもなく可愛い男に仕上がっている)卒業してしまい、今回は、
学生運動のカリスマでずるい小心なところもある(虚勢の張り方が魅力的)
柏木役が、東幹久で、山崎役がなぜか、石原プロの徳重さん。あの
「21世紀の裕次郎コンクール」で優勝した、スーツが似合って濃い顔立ちの
「石原プロ好み」の2枚目俳優である。若手と思ってたらもう33歳とからしい(笑)。

さて、結果、東さんはとても器用な役者さんらしく、自分なりの柏木、を
きれいにまとめて作っていた。コミカルな部分を足して、観客に親しみを
感じさせやすい柏木。しかし最後の決戦のときにマイクを持って全共闘の皆を
煽るシーンで、鳥肌が立たなかったのが残念。あそこで、心がわーっとざわめいて
叫びたくなる気持ちになりたいんだもん。

そして、徳重さんは、とにかく、美智子を一途に愛する直球な男、になりきろうと
必死なのは伝わってきて、その必死さが、山崎の余裕のなさ、自分が彼女を
愛しすぎて追い詰められていく感じと重なって、後半は「こういう不器用な人と
して見るとそれもせつないな…」とグッときた。ただし、長セリフとかダンスが
どんくさくて、重い。その不器用さがかわいく見える得なタイプなので、つかさんは
そっちに賭けたんだろうなあ。

黒木メイサは、もう、あて書きされたかのように美智子になりきっていた。
最初の田舎娘設定の瓶底メガネをかけ、のろのろとしゃべるところも、
全共闘のカリスマとして、そして沖縄の運命を背負った特別な女性として
立ち上がってくるところもよかった。ただ、黒木メイサが沖縄出身ということで
今回のシナリオに描き足された戦争の時の沖縄の扱われ方とか原発や基地の
問題は、話を複雑にし、シンプルに「方法は間違ってたかもしれないけど、
あの日は日本のためにみんな本気で一生懸命だった」というところにぎゅっと
最後に収束されてく感じがなくて、話をふわっと散漫にしちゃった気がして、
正直、蛇足だったように思う。

そして…その役をやった女優さん自体はすごく良い演技で存在感があったの
ですが、美智子以外に、全共闘の中に女性キャストを入れたのは良くなかったと
思う。男たちは皆、美智子にひれ伏し、彼女を守る盾になり、という感じの
紅一点舞台なところがこの芝居の魅力だと思うので。

というわけで、演者さんたちはそれぞれ良いところがあって魅せてくれましたが
演出とかシナリオは、基本的なバージョン(本で発売されているものとか、
前に見たものとか)のほうが私は好きだったかも。途中でつかさんが病にたおれ
演出を直につけられない時もあったと聞くので、そのへんが微妙に完成度に
影響したのもあるのかもしれないけど。

しかし、黒木メイサの輝きはすごい。本物!って感じ。
本編は全部無骨な黒ジャージで演じて、アンコールでドレスアップして
挨拶してくれるのだが(昔はバニーガールの扮装をした女優さんもいるよう
ですが、広末のときは、黒いドレスでした。色白すぎてびっくりした)、
メイサさんは赤のミニドレスで登場。ダンスで鍛えているのか、目の前で
躍動する筋肉質の脚(長くてしまってる!)と腕の美しさがすごかったし、
声もよく通り、つかこうへいのクドめの長セリフがすがすがしく気持ちよく
最後まで聴けた。あの若さで見事すぎる。
by tohko_h | 2010-03-05 13:20 | watching