人気ブログランキング |

2010年 03月 31日 ( 2 )

a0079948_15494299.jpg
「盆栽マイフェアレディ」 山崎マキコ
今はどうだか知らないけど、私が学生で
就職試験を受けていた頃は、某有名&
大手出版社で「三題話」という作文の
テストがあった。関係なさそうな3つの単語を
提示され、それを全部入れて400文字とかの
まとまった文章に仕上げるという、笑点的な
試験で…私も実は受けたんだけど、
3つのうちひとつ見たことも聞いたこともない単語があったので
「~(その知らない単語)」を辞書で引く人の話、とかにして
逃げました(笑)。※一応なんとかなったけど(笑)。

「盆栽」
「恋愛」
「お金」

こんな三題話に答えたかのような、一見バラバラなネタを組み合わせて
とても素直な小説に仕上げてある奇跡の1冊…が、この山崎マキコの
小説「盆栽マイフェアレディ」です。

大学卒業後、盆栽師見習いになった繭子が、兄弟子の松本と
300円の弁当を食べながら、盆栽や自然の美にいやいやながらも
魅せられていく日々を送っているところからお話は始まります。
しかし、ある日、高い盆栽を買いにきたケタ違いの
お金持ちの男性に見初められ、
お台場のマンションや横浜のレストランに連れて行かれ、愛らしい
ドレスや靴をプレゼントされるシンデレラ状態に。

松本とともに盆栽の道を歩むか…
お金持ちの彼の世界に飛び込むか…

繭子は悩みます。
その悩み方が、奇麗事じゃなくて、リアルなところがとても良い。
高級品やリッチな世界にはやっぱりうっとりしちゃうし、だけど
貧しい中にも真摯にやりたいことを見つけてく松本を見ると焦る。

ふつうのラブストーリーとして読んでも、女子の生き方見つけ系として
読んでも、盆栽の世界の入門書として(盆栽の見方とか手入れの
大変さなども描写されており、とても楽しかった)も、よくできているのです。

私は最初のほうは、はっきり明確に「毎日買い物ができてゴールドカード
くれて、自転車の代わりにベンツ買ってくれるみたいな彼氏の方がいい」
と思っていたのですが、最後まで読むと…分からなくなりました(笑)。
小説の結末自体はスッキリきっぱりですが、余韻は意外と長く尾を引く感じ。

やはり贅沢するシーンは読んでて興奮するんだけど、盆栽をいじる
シーンもだんだん「ちょっとさわってみたいかも・・・」と思えてくる、
不思議な読み心地も魅力的。
by tohko_h | 2010-03-31 15:52 | reading

a0079948_142169.jpg
「天国旅行」三浦しをん
三浦しをん様の新刊キター!
装丁もギザかわゆす☆
と、2行だけ中川翔子風に書いてみました(意味なし)。
三浦さんの新しい短編集は、「心中」が共通テーマの
作品を7本集めた1冊になっています。
1話目最初のシーンがいきなり自殺希望の男@樹海。
しかし死にぞこない、サバイバルゲームしてる風の
若い男と知り合います…


すみません、しをんさん! 私、そこから一瞬、若い男×自殺男、の
むにゃむにゃ…なストーリー展開を予測しちゃいました(笑)。
だってテーマ心中らしいし!
しかし物語はそんな風にはもちろんならず、暗くてじめじめしてるで
あろう樹海の中で、意外な、でも通して読むと「なるほどこうか」と
納得行く展開になっていきます。

心中といってもいわゆる「男女がお互いの体をロープでつないで
崖からダイブ」的な、いわゆる愛し合う者が同時に死のう、的な
フツーの心中話はありません。亡くなった人と、こちらの世界に
残ってる人の交流を描いた話とか、ファンタジックな展開になって
いたものもあって、不思議な読後感の1冊でした。

短編になるとますます「ほんとうまいなあ」と文章の的確さ美しさに
酔いしれることができるのはさすがの三浦しをんです。

ただ、最近出した長編で一番重かった「光」なんかもそうなんだけど、
そのー・・・うますぎる感が、ちょっと、なんていうか難しいけど、
物足りないというか、普通の「若いのにすごく書ける作家」に収まって
しまいそうで、ちょっと古くからのファンとしては複雑でもあります。
これが、三浦さんがまだ無冠の作家だったのならば「賞狙いスイッチを
編集が入れたのかな?」と思うほど、うまさを全部あますところなく
出しきってる完成度なんですよねー。でも彼女はすでに直木賞作家。
単に作風が変化してる時期なのか。

というわけで、しをんさんの才能全開の1冊。
by tohko_h | 2010-03-31 14:09 | reading