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2010年 09月 30日 ( 1 )

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「ボトルネック」
米澤穂信
ボトルネック【bottleneck】
瓶の細くなった首のような部分。
転じて、流れ作業の効率が最も
悪い箇所。隘路。律速。


両親は不仲、兄は寝たきりで意識不明、存在感が希薄。しかも2年前に
恋人・ノゾミをを失ったいいところなしの僕。彼女が死んだ東尋坊の崖の上
ひとりでノゾミを弔っていたが、何かに引き込まれるように転落。
気づくと、そこは、まるでパラレルワールドのように、少しずつ、自分が生きていた
現実と違う世界だった。自分が生まれる前に体が弱くて育たなかったはずの
姉の「サキ」は生きており、道をふさいでいた銀杏の木は消えており、そして…

という、SFっぽい設定をいかして、誰もが1度くらいは思った疑問
「自分がこの世にいる意味ってなんかあるのか?」を突き付けてくる
作品です。自分がいない世界、を眺め、まちがいさがしをしているうちに
彼は「自分がいた世界のほうが、間違いではないのか・・・」と立ち止まって
しまうのです。その黒雲のような疑問を彼は吹き飛ばすのか、それとも
押しつぶされそうになるのか、は、興味があれば読んでたしかめてください。

私は「とりあえず生きて今よりいい目にあいたい」という意地汚い人間だから
今まで、かなりいやなこともあったけど、自殺って1度も考えたことがありません。
ただ「最初から、生まれてこなければよかったな。そしたらこんなにうだうだ
考える私なんていなくて、こうして考えてることもなくて、全部ゼロなのに」と
存在全否定、をしたことは何度かあります。もっと軽いレベルで、仕事などで
面倒なことが起きると「あーこんなことが起こるなら生きてたくなかった」と
自分勝手なことを思うことも、時々は、あります。たぶん、本格的な生命の危機に
脅かされたことがないからこその図々しい言い草です。

最初から自分が生まれてなかった世界。見てみたら「やっぱり私いて
よかったんじゃん!」と思えるか「いなくても、よかったんだ・・・」と凹むか。

そんなことをじわじわ考えてしまいました。
青春まっさかりの、自分探し予備軍世代が読むと、結構キツいかも。
「僕って何?」という若者らしい疑問が「何ものでもない自分がどう生きるか」
というところにまだ着地する前だとね。

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設定やテーマは興味深かったんだけど、エピソードがどれも頭で考えて
描いたような、地に足がついていない感じがして、最後まで「絵空事を
読んでます」という印象がぬぐい去れなかったのが、残念。
by tohko_h | 2010-09-30 16:14 | reading