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2011年 02月 18日 ( 2 )

映画「あしたのジョー」

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ドスの効いた尾藤イサオの♪サンドバッグに~というテーマソングと
ラストシーンが有名な「あしたのジョー」。連載当時は、梶原一騎
(ジョーのときは高森朝雄名義)とちばてつやが繰り広げる世界に
多くの人たちが魅了され、ある世代の男性にはバイブル的存在だったと
いう国民的名作漫画である。

貧しい孤児で不良少年だったジョーが、もとボクサーの落ちぶれた男・
丹下段平と出会いボクシングを教わり、やがてプロの拳闘家となって
いく物語だ。

人々をもっとも熱狂させたのは、不良少年時代に少年院で出会った
力石徹とのライバル関係と、ジョーと力石の死闘のあたりであろう。
力石はジョーより大男なので、骨も太い。普通、ボクシングの場合、
体重別に階級が分かれており、力石はジョーより2階級上なんだけど
少年院時代の決着をつけるために、無理な減量をしてまで、ジョーと
同じリングに立とうと必死になるのだ。この力石が死んだときなど
(ネタバレすみません、でも、有名な話なのでお許しを)、葬式を実際に
行ったということで、たぶん、日本初のマンガのキャラの葬式だった
んじゃないかなー(最近だと「ラオウのお葬式」@北斗の拳、も
あったような…)。

という、昭和を代表するとにかくすごーい骨太なマンガを、
山下くん(ジョー)と伊勢谷さん(力石)という、平成の美青年ふたりで
映画化…原作漫画を途中までしか読んでいない私は、まあ、
有名な作品だし、山下君割と好きだし、丹下段平に香川さん、なりきってるし…
※参考画像
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と、割とミーハーな感じで観にいったのです。

レディースデーだったこともあり、場内は女性で満員。
皆、山下くんや伊勢谷さんがお目当てなんだろうなーボクシングマニアとか
梶原イズムの信者みたいな女の子がこんなに大量にいるわけないもんな、とか
昭和に思いをはせながら座ってると、はじまりました!

おお、昭和の暗いニュース映像風の雑踏に、あのテーマソングのイントロ!
いいぞいいぞ、におってきました。そう、汗のにおい、昭和のドヤ街のにおい、
貧乏食堂の安いだしのにおい、川べりの生臭い感じのにおい…そんな
におうような映画じゃないと、これはダメだと思うんです。ジョーと丹下が
出会い、生きているドヤ街は、ここを追い出されたらどこにも行けない、という
お金も家族もない人たちが肩を寄せ合って暮らしている…町全体が
貧乏長屋みたいなドヤ街。子供たちは元気いっぱいだけど、大人は色々な
ものを失い、また、諦めている…絶望のにおいがしている。で、ドーン!と
タイトルロゴと、古臭いフォントでキャストと監督の名前が入って本編へ。

最初の方は、ジョーの不良としてのケンカのシーンが続きます。
ぼろぼろのハンチングも似合う山下くん。ちばてつや先生の描くジョーの
くるんとかわいらしい感じ(初期の絵柄は子供っぽい顔してるし)と
違和感なく面影が重なります。山下くんは、実は、やり手の医者でも
ヘタレなバスケ選手でも華麗なサギ師も…その顔になれる画面映えの
よい、俳優さんとしても魅力のある人だなーと再確認(「あしたのジョー」の
パンフレットで、香川照之も「役者っていうのは一番いやなことをやりきる
様な仕事。で、山下くんはそうあろうとしている、たいしたものだ」みたいに
絶賛してました!)
そして少年院でのバトル。
力石との闘い。力石はもとボクサーだったのに、少年院に入ってます。
それでも所属ジムの令嬢・白木葉子は力石の出所後、彼をプロとして復帰
させます。葉子の香里奈は、見せ場があまりないからしょうがないのかな、と
思うんだけど、普段は器用に地味な役も派手な役もこなすチャーミングな
存在感を出すところまではいかなかったようです(でも画面に白いワンピースを
着て華を添える役割は果たしてた)。そしてジョーも少年院を出て、
丹下の直接指導を受け、ある必殺技を引っさげて、華麗なるプロボクサー
デビューを飾ります。最初は「酔っぱらいの丹下と不良少年のジョーが
ボクシング?」と冷たい目で見ていた街の住人たちも「こんな貧しい街から
出世してスターが出るんだ」と、だんだん目に光が宿ってくるんです。
このへんの描写もちょこちょこ挿入されてて、胸を打たれました。

主人公のジョーは、熱血キャラではなく、どこか冷めてて、でもかわいい
ところもあって、白木葉子がウッカリ惚れてしまいそうになる独特の色気も
あって、というかなり面白く魅力的なキャラクター。それに、ボクシング同様
真面目に食らいついた山下くん、素敵でした。腕や脚の線が特に奇麗で
ボクシングシーンも迫力十分。顔を殴られるシーンで、歪んでもゆがんでも
美しいのには「…この人、ほんとうにきれいなんだ」と変な感動も(笑)。

そして、力石の「2階級分体重を落としてジョーに挑む」という設定を
自分の肉体で表現した伊勢谷さんには、びっくり&感動。力石の
計測シーンで、バスローブを脱いで体をあらわにしたところで、映画館は
ため息に包まれました。元々すらりとしてスタイルのいい伊勢谷さんですが
骨ばって、肩とか腰とか…「人間ってこんなところにも骨があるんだ」と
見たことのない形で骨が出っ張ってるのです。限りなく「骨と皮」に近い
状態で、でも筋肉は残すって、この「役作り」は、ちょっとすごすぎです。
更に、めちゃめちゃクールな役柄なんだけど、時々浮かべる笑みの表情が
すっごくカッコいい。東京芸大卒のアート寄り知的イケメンのイメージが
あったんだけど、今回は、野性的で悲しみを帯びた男になりきってました。
…うっかりファンになりそうになりましたよ、あるカットの表情に惚れてしまい。

そして、もちろん香川さんの丹下…先に、宣伝用の扮装写真を見ていたので
逆に、やりすぎでウザくなってないかなーと(香川さん本人がボクシングマニアで
あしたのジョーも愛してるし、芝居の濃さに定評があるからこそそれが裏目に
出てるケースもあるかな、と)思ったんだけど、ジョーをかわいくてたまらない
育てたくてたまらない、という狂気と紙一重の情熱と愛があふれ出している
ステキな段平で、この人がいなかったらこの映画はなかったな、と思いました。

というわけで「まあ、話題作だしー」と見たのに、最後は興奮するわ涙出るわで
もう、のめりこみました。たぶん、DVD買うと思う(メイキングとかもついてる
一番いいやつ(笑))。

けっして明るく前向きなだけの話じゃないからこそ、かえって、ものすごく力強K
見てるほうもなんか燃えてくるような感じがしました。そして力石を見て、
私なんか余分なものだらけだから痩せるのきっと簡単だわ、と、帰り道に
ダイエット本を2冊ほど買っちゃいました(笑)。
by tohko_h | 2011-02-18 11:41 | watching

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熊本から恋人を連れ戻しにやってきたケーキ屋の娘・なつめ(蒼井優)は、
中目黒にある恋人の修行先の店、洋菓子店コアンドルに向かった。しかし
彼はとうにやめており、オーナーパティシエール(戸田恵子)と彼女の
フランス人の夫、そして勝気な女パティシエだけが居る状態。
「ここで働きながら彼を待ちます! あたし、ケーキ屋の娘ですから」と
ちゃっかり居座ることにしたなつめだが、コアンドルの洗練されたケーキは
実家で出していた素人っぽいケーキとはレベルが違う。ここの厨房でやって
いくのは大変そうだ。オーナー夫妻は何かと気にかけてくれるようだが、
先輩はとても意地悪でぶっきらぼうな怖い人だし…常連客(加賀まりこ)や
伝説のパティシエだったが今は評論家や講師しかやらない十村(江口洋介)
などが出入りするこのお店に、東京に、なつめの居場所はあるのか。
そして、十村はなぜケーキを作らなくなったのか。居場所を探す女の子と
天職を諦めて(ある理由から)しまっている男の、ケーキのように甘くは
いかない人生の物語。

オープニングはケーキを作る厨房の風景から始まる。スポンジを切り分ける。
クリームを混ぜる。繊細なデコレーション…美しい果物のいろ。もう、
これだけでおなかがすいてくる。いいぞいいぞ。旅行かばんを抱えて
熊本弁で物怖じしないでガンガン都心を歩く蒼井優のショット。だぼっと
したコートにばさばさの髪にトランク。ブサかわいい服を着たら日本一だ。
これは名画の予感!
しかし予感はあっさり裏切られる。このヒロインの性格が、酷い。
まともなケーキが作れないのに自信たっぷりで、恋人との関係についても
勘違い女で、かわいくない、のである。かわいげがないけど憎めないキャラ、
とかになっていない。普通に憎める(笑)。そんな彼女を見守る周囲の人たちも
彼女の自分勝手ぶりにぶちきれる先輩も、みんな背景にしか見えない。
蒼井優主演のアイドル映画だと思って観ろってことなのかな?とか思いつつ、
観る。ケーキ作りの実力も人としての可愛げや誠実さも見えないヒロインが、
店の人たちを元気付けたりお客に好かれたり、という展開に、ちょっと
胸焼けがしてきました。ポスターのコピーには、「甘くない人生に、時々
スイーツ」とか書いてあるけど、この展開は甘いだろう。

彼氏ともめて酔っ払うところ、煮え切らない江口に熊本弁でまくし立てるところ
など、ところどころ「蒼井優、いいなー」と思うのですが、なつめというヒロインの
キャラクターが、自分の友達でも姉妹でも後輩でも先輩でもイヤだろうなー
という自分勝手でいいとこなしなので、シーンがちょっと光ってても、映画の
印象としては、げんなり、でした。

蒼井優とケーキの可愛さを観に行ッたつもりでしょ、これでいいのよ。と自分に
言い聞かせてみましたが…あまりにもヘンなストーリー(ベタな展開なんだけど
とにかく進み方が荒々しすぎるし、何かはしょられてる感じ)に感じたので
原作本まで読んでみたけど、やっぱりヒロインは可愛くなくて、展開はご都合主義。
画面の雰囲気はかわいく演出されてるガールズムービーだとは思うんだけど、
観終わった私は「なんじゃこりゃー!」状態でした。
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映画「南極料理人」を見終えた後はラーメンが食べたくて仕方なくなったけど
この映画を見た後、ケーキを食べたくはならなかったなーそういえば。

とか思いながらパンフレット(表紙が可愛くて買った)を読んでみて初めて
映画「白夜行」の監督だったと知る。どちらの作品も、キャラを消化しきれて
いないまま(観客をある程度キャラ力で魅了したりとか…)、エピソードだけを
積んでいくから観客の心がついていくのが大変な作品だった、という印象は
確かに一緒だ…この監督と私の相性がイマイチなのかなー。うーん。
by tohko_h | 2011-02-18 07:35 | watching