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2011年 06月 19日 ( 1 )

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「ファミリーポートレイト」 桜庭一樹
ママの名前は、マコ。誰よりも美しくて
旅先では直ぐに男の人に抱かれてしまう。
娘の私は、コマコ。つまらないちっぽけな
それでもママの人生には不可欠な…
パズルのピースみたいな女の子。ふたりは
何かから逃げるように旅を続ける…。
桜庭作品で、父と娘を描いた問題作「私の男」
と対になるのがこのお話ではないだろうか。


こちらは、母と娘が主題になっている。砂漠の中の皆が養豚業を営む街とか
老人しかいない雪の中の村とか、どこか幻想的な世界のなかを
母娘がさまようのが第1部である。

それにたいして、娘のコマコが物語の中心に躍り出る第2部では、東京の具体的な
地名が出てきて、いきなり舞台はせまくなり、物語は生々しくなる。
幻想から現実へ。
夢のような世界からリアルな東京へ。
母から娘へ。
章とともにリレーされるあれこれの落差に戸惑っていると、あっけなくそっけなく、
物語にはピリオドが打たれていて「あれっ?」っていきなり終わった印象。

確かに人生はどこで区切れるものでもなく、流れる水のように続き、いきなり
どこかで断ち切られるものではあるけれど。そのばっさりぶりにびっくり。
1000ページの長い物語の結論ってことで、何かものすごく意義深いものが
出てくるのかと思って身構えて読んだら、ふっと終わった感じ。なので、濃厚な
長編を読んだときの「1冊まるごと飲み込みました!」という満腹感の代わりに
「私、何やってたのかな」と夢から覚めてぼんやりするような変な読後感でした。

このヘンな脱力感、15歳の時に「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
(村上春樹)を読み終えた直後と似ています。あまりにも遠い世界に連れていかれた
せいで、脳内時差ボケにやられちゃったのかもしれません。作家の力ってすごいな。

とか書いてると、絶賛してるみたいですが、実はさほど好きなタイプの本じゃなくて。
幻想的な不思議な世界で自由でさびしい人たちが演じている芝居を見せられてる
みたいなちょっと遠くで進んでいくお話…でもその遠さにものの見事に引きずられて
疲れるまで読まされたので、物語としてはすごいできばえの1冊なんだと思う。
by tohko_h | 2011-06-19 17:38 | reading